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専門コラム 第13話 ビジネスに自分自身の感性を生かす

決断できるに越したことはありませんが・・・

強く決断できる自分でありたいと思っているあなたは、実は、決断が遅くていつも反省していたり、優柔不断な自分を変えたいと思ったりしているのではありませんか? 

自己改善を図るのはいいことですが、もしそうであるなら落ち込んだり思いつめたりしない方がいいと思います。決断が下せない人はいっぱいいます。

というより、ビシビシと即断即決できる人の方が少ないと考えた方がいいかもしれません。

考えてもみてください。日本は今、ものすごい少子高齢化の真っ最中です。その余波として浮上した「年金+2000万円問題」も、7月21日投開票が決まった参議院議員選挙を前に大きな注目を集めています。しかしこの少子高齢化は、1970年代にはすでに指摘されていました。

ところが、政治家も官僚もずっと先送りしてきた結果が、現在庶民の間に蔓延する将来不安です。この場合は、個人的な資質と言うより選挙目当てに走る政治家の自己保身か、定期的に移動する官僚のことなかれ主義が原因だったとも言えますが、そんな例は、高度成長期の公害やバブル崩壊後の経済運営をはじめ、さまざまな局面で現れました。

ビジネスの世界においても、先延ばしというのは常にあったのでしょう。多くの人が、決断の重要性を指摘する警句を残しています。

ビジネスにおいて6カ月早ければよかったということはあっても、6カ月遅れてよかったということは、まずない。

(ゼネラル・エレクトリック社のジャック・ウェルチ元CEO)

 私だって分からないことだらけで毎日不安だけれど、社員の前で「分からない」とは言えない。だから、決断して行動する。それが間違っていたら軌道修正する。この繰り返しだ。

(同、ジェフリー・イメルト元CEO)

 部下は決断を間違えるリーダーではなく、決断できないリーダーに愛想を尽かす。

ビジネス本の著作が多い文筆家、千田琢也

こうした言葉が頻繁に目につくのは、逆に、決断が遅れて後悔した人がいっぱいいたことの裏付けと思ったらいいのではないでしょうか。

                   

「鳴くまで待つ」家康らしい警句

しかし、決断すべき時に決断できないのは困ったことです。まさに社員から愛想を尽かされるかもしれませんし、場合によっては、会社の存続を危うくします。

では、決断のためには何が必要なのでしょうか。徳川家康はこう言っています。

決断は、実のところそんなに難しいことではない。難しいのはその前の熟慮である。

徳川家康

日本ハム創業者の大社義規も似たような言葉を残しています。

ビジネスは賭けではない。決断の一瞬は賭けであるが、それまでは周到な情報収集と準 備が必要である。それは天使のような繊細さをともなう。そして決断には悪魔のような大胆さを必要とする。

日本ハム創業者の大社義規

一方で、「巧遅は拙速に如かず」という故事もあります。「孫子の兵法」で有名な稀代の兵法家、孫子が書き残した

兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきをみざるなり

孫子

からきた言葉とされますが、異論もあるようです。意味するところは、「戦争は戦術がよくないものであったとしても、迅速に行動し早く終結させるのがよい」ということです。決して拙い戦法でいいと言っているのではなく、ビジネスや普通の社会生活に当てはめて考えれば、「あれこれ手を加えて遅くなるよりも、余計な手を加えずに早い方がよい」と言っているように思われます。

家康ら前2人の言葉はもちろんですが、孫子の言葉にしても、決して決断のスピードにこだわれと言っているわけではないように思います。大切なのは、決断に際しての心理状態、気持ちの持ち方にあるのではないでしょうか。

                                 

心の余裕が後悔しない決断を生む

追い詰められたあげくの決断というものは、過ちやすいものです。タイムリミットが迫るほどに、希望的観測が心を占めるようになるからです。それを信じることで、渦巻く不安や逡巡をねじ伏せたくなるのでしょう。しかし、そうなると正確な判断はできません。

必要なのは、状況を正しく認識して理性的な判断を下すことです。そのために何が必要かと言うと、心の余裕ではないでしょうか。

余裕がなくてイライラしていると、仕事の段取りが悪くなり他人の話に関心を持つことができなくなります。当然、仕事上の判断にも悪影響を与えますし、自信がなくなって焦りや不安が生じ、それがまたミスを引き起こすという悪循環に陥ってしまいます。

逆に、心に余裕のある人は、やるべきことを明確にして整理でき、小細工をしません。何より視野が広がり、アイデアも湧いてきます。言い換えれば、心の余裕のある人は、頭の中の考え事をするスペースにもゆとりがあるのです。

そうすると、今やるべきことがクリアになり、いわゆるタスク管理がうまくこなせるようになります。決断をするにあたっては、そのテーマにまつわるさまざまな条件や課題を、優先順位を付けて整理する能力とそれを実現する心の余裕が求められるのです。それがあって初めて、自分の経験と感性に根差した決断ができるのだと考えます。

もちろん、どんなに余裕があっても100%の見極めはできません。むしろ、100%見極められたら、その時にはチャンスは手の届かないはるか先に行ってしまっています。その意味では「決断は一瞬の賭け」です。

決断に伴ってもう一つ必要なのが、「決めたらやる」ことです。決断してもそれを実行に移さなければ、決断したことになりません。そして、実行に移す以上は思い悩んではいけません。決断した後になお試行錯誤するようでは、周りはついてこないでしょう。

最後に、気に入った言葉を記しておきましょう。フランスの哲学者であり数学者、思想家で、「人間は考える葦である」という名句を残したパスカルの言葉です。

若すぎると正しい判断ができない。年をとりすぎても同様だ。

パスカル

経験を積むことで、記憶のデータをうまくネットワーク化し、物事を判断する力が飛躍的に高まるのです。中高年の人には自信を取り戻せる言葉ではないでしょうか。そして、人生100年時代、「年のとりすぎ」と言われるまでにはまだまだ時間があるはずです。

                                

あなたは心の余裕を獲得して適切なタスク管理を生み出し、自分自身の感性を生かしたビジネスをしたくありませんか?