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専門コラム 第44話 「正しい努力」を積み重ね、自他ともに認める大きな成功を手に入れる。

野村元監督が実践した「正しい努力」

戦後初の三冠王、監督としてもヤクルトを3度日本一に導き、「知将」とうたわれたプロ野球評論家の野村克也さんが亡くなりました。

出場試合数とともに通算本塁打数、通算安打数、通算打点数という打者としての主要な部門でいずれも「歴代2位」という記録を見ると、まさに「月見草」の現役人生だったのかと、変に納得させられます。

 

しかし、人間・野村克也をみると、むしろ監督時代あるいは評論家時代の方がその存在感を増していたように感じられます。

「野村再生工場」と呼ばれたほど多くの選手に輝きを取り戻させた眼力、ボヤキにことよせて選手を鼓舞する手腕。

これらは、選手として築き上げた自分の内なるスタイルを、言葉に翻訳することで明確にし、無駄なものをそぎ落とすことで身に着けた円熟味のなせる業だったという気がします。

 

テスト生として南海ホークスに入団した野村さんは、高校時代まで華々しい舞台や結果とは無縁でした。

それゆえに、自分には才能がないという自覚の上に立って必死に頭を使い、体を動かし、更なる上を目指して努力を積み重ねました。

そうして、頭の使い方、努力のし方次第では、才能がなくても天才に勝てる、2流が1流を超えられるということを実証して見せたのです。彼はこう言っています。

 

自分をよく知り、自分に足りないものを見極め、そのために何をすればいいかを追い求め続ける「正しい努力」が自分の野球人生の土台になった。

「正しい努力」は決して裏切らない。

 

単なる努力ではありません。

必要なのは「正しい努力」なのです。

そのためには、まず己を知ることから始まると、野村さんは言っているのです。

 

しかし、己を知ることは、言葉で言うほど易しいことではありません。

人はともすれば自分に甘くなりがちですし、単に他人と比べてどうかという尺度だけでは、正しく己を知ることはできないからです。

 

己を知ることの大切さとむずかしさ

己を知ることの大切さといえば、現代のビジネスマンにも活用している人が多い中国の兵法書「孫子」にある次の言葉は、皆さんもご存知でしょう。

 

彼を知り、己を知れば、百戦するも殆(あや)うからず

説明するまでもないでしょう。

この言葉には続きがあります。

「彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず殆うし」というのです。 

 

勝負ですから当然、敵の実情や敵将の資質、戦術なども知っておかなければなりません。

自軍のことを熟知しておくのは当然のことです。

そのうえで、さまざまな展開を予測してシミュレーションを重ねることで勝利に近づけます。

勝てないと思えば戦わないという選択肢もあります。

 

この際に陥りがちなのが、希望的観測です。

こうしたい、だから相手はこうなるだろうというのでは、敵も己も知っていることにはなりません。

彼我の差を正確に把握するためには客観性、公平性が欠かせないのです。

 

若いうちは、がむしゃらに突き進みがちです。

往々にして、客観的な評価基準を持たなかったり世間のハレーションを無視したりするがゆえに失敗し、挫折しますが、やり直しがききます。

 

逆に、人生の年輪を重ねてくると、そうしたがむしゃらさは薄らぎ、やり直しのチャンスは減っていく一方、積み重ねてきた経験が、若さが有する弱点を補い、足りない部分も含めて己というものが見えてくるようになるはずです。

 

というよりも、経験を生かさないのはもったいない限りです。

どんな経験であろうと、経験は自らを見つめ直し、ゴールを設定するときに大きな指標になります。

野村さんにもそんな揺るぎのない視点が、監督経験を積むとともに次第に備わってきたように思えます。

 

経営者であっても同じではないでしょうか。

経験を積んだ経営者ほど判断を誤らず、成果を生みやすいと言ってもいいと思います。

ただし、経験の活かし方も学ばないといけません。野村さんはこうも言っています。

自分を過大評価した瞬間に、思考の硬直が始まる。

組織はリーダーの力量以上には伸びない。

リーダーは勉強し続けなければならない。

これらもやはり、「正しい努力」に通じることでしょう。

 

覚悟を決めれば、人も成果もついてくる

野球に限らず、人生には勝負どころがいくつかあるはずです。

結婚や就職といった人生のビッグイベントに限りません。

日々の仕事の中にも、それはあります。

人間を単純にタイプに分けることは好みませんが、勝負どころに直面した時の態度には大きな違いが生まれます。

ぶつかるか、逃げるかです。

そこでいかに腹をくくれるかが、勝敗を分けます。

 

腹をくくるとは覚悟を決めること。

覚悟とは、不利なことや危険なこと、

苦労があるということを分かったうえで、ありのままに受け入れようとする心構えです。

そうした心構えができたときは、決して玉砕覚悟というのではありませんが、少なくとも結果は度外視しているでしょう。

それでも多くの場合、思い描いた結果はついてくるものなのです。

 

なぜなら、迷いがないためターゲットに100%集中できることが一つ。

そして、腹をくくった人間は、そのひたむきさが周りの協力を呼び込むからです。

あなたが腹をくくれる人なら、恐らく周りには協力者、力を貸してやろうという人が多いでしょう。

 

野村語録にはこんな言葉もあります。

コンピューターがどんなに発達したとしても、仕事の中心は人間で、ならばそこに「縁」と「情」が生じる。

それに気づき大事にした人がレースの最終覇者になるだろう。

自分のことだけ考えて仕事をする者は長くは続かない。

人ひとりの力は、それほど強くないのだ。

野村さんは、選手たちに「チームのために戦え」「他人への感謝の気持ちを忘れるな」と常々言って聞かせていました。

現役時代に漂っていた一匹狼のイメージからはかけ離れて見えるかもしれませんが、南海ホークスを石もて追われるようにして辞めざるを得ず、佐知代夫人との関係を非難され続けた野村さんだからこそ、最後に行き着いた視座だったのかもしれません。

 

腹をくくれる人が、いくつになっても謙虚に学び、周囲への感謝の気持ちを忘れなければ、成功はおのずと近づいてきます。

あなたは、「正しい努力」を積み重ね、自他ともに認める大きな成功を手に入れたいと思いませんか。