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専門コラム 第12話 「お客様の心を捕えて、結果を出せる」という揺るぎない信念を手に入れる


顧客満足より顧客創造

本コラムにも何度か登場させていただいている「マネジメントの父」、ピーター・ドラッカーは、企業と顧客の関係についてこう断言しています。

事業体とは何かと問われると、たいていの企業人は利益を得るための組織と答える。
たいていの経済学者も同じように答える。
この答えは間違いではないが、的外れである。
事業の目的として有効な定義はただひとつ。
それは顧客を創造することである。

「顧客の創造」とは何を意味するのでしょうか。

顧客とは繰り返し自社製品やサービスを買ってくれるお客様です。言い換えればファンです。ファンですから、取り立てて営業活動に力を入れなくても付いてきてくれます。しかし、それに安住していては、先はありません。なぜなら、社会は変化するからです。

ドラッカーはこうも言っています。

あらゆる組織にとって、もっとも重要な情報は、顧客ではなくノンカスタマ(非顧客)についてのものである。変化が起こるのは、ノンカスタマの世界においてである。

つまり、新しい消費動向や時代の変化は自社のテリトリーとは違う世界で起こり、ノンカスタマが創り出す新しい市場にいち早く目を向けなければいけないということ。もっといえば、そうした新しい市場を創り出すことこそ、「顧客の創造」だというのです。

経営の3要素は「人、モノ、金」と言われます。最近はこれに「情報」が加わるようですが、いずれにもマネジメントが求められます。マネジメントというと「管理」という意味合いが強いように思われますが、経営学においては、持ちうる資源の効果を最大化することに力点が置かれます。このため、ドラッカーは、マネジメントを「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」と定義づけているのです。

先のドラッカーの言葉に従えば、顧客マネジメントにおいて「顧客満足」だけを追い求めていては、時代の変化に対応できず、会社は衰退していきます。顧客満足だけに傾注することの弊害はもう一つあります。情報が氾濫し、あっという間に拡散する現代、自らの潜在的な欲求をつかみ切れていない顧客も多いのです。

ITツールの有用性と限界

とはいえ、今持っている顧客をきっちりマネジメントできずに、新しい市場の創造もありません。これもドラッカーの言葉です。

顧客と市場を知っているのはただ一人、顧客本人である。したがって顧客に聞き、顧客を見、顧客の行動を理解して、はじめて、顧客とは誰であり、何を行い、いかに買い、いかに使い、何を期待し、何に価値を見いだしているかを知ることができる。

そのためのツールは急速に発達しています。一般の人でも日常的に接しているのがクラウドサービスでしょう。顧客に限らず一度だけ利用したお客様を含めて、住所、性別、年齢となどのパーソナルデータはもとより購買履歴やWeb閲覧、メルマガ開封、セミナーへの参加などさまざまな活動履歴が蓄積され、それらを元に、一人一人が関心のありそうな商品やサービス情報がスマホやPCに飛び込んできます。 

個人情報の漏洩の恐れはありますが、GAFAを筆頭に、今や新しいビジネスとして欠かすことはできなくなっています。Facebookが明らかにした仮想通貨リブラも、こうした巨大な人的ネットワークを背景にしたものであることは明らかです。

  • GAFA・・・米国を代表するIT企業である、グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェースブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の4社をいう。

こうしたデジタルマーケティングでは、顧客の行動を把握することによって、顧客自身が明確に意識していなかった欲求を探知することも容易になってきたと言えるかもしれません。

デジタル化以前に、多くの企業が取り組み始めたのが、名刺情報の社内共有化です。人のつながりというのは、営業活動においては営業マン個人の財産と考えられてきました。いかに広範にわたって密度の濃いネットワークを持っているかが、自分の営業成績に直結するからです。

膨大な量の名刺の管理はかつて、名刺ファイルや名刺ボックスに会社や職種ごとに仕分けするなどして整理していました。アナログの典型のような作業でしたが、短時間で活用するのには不向きでした。その作業効率と活用度を飛躍的に高めたのが「Eight」などの名刺管理アプリです。これにより新たなお客様開拓も容易になりました。

さらに、個人の財産を広く社内に生かしてロスを防ぐとともに、個人的ネットワークを会社全体に広げるのが名刺情報の共有化です。個人が抱え込んでいたお客様情報や交友関係をお互いに提供しあって、それぞれの仕事に生かそうというものです。これが定着している会社では、ネットワークは何倍にも何十倍にも拡大して、仕事の能率と密度がグンとアップしているでしょう。

「共感」と「協創」がこれからの顧客マネジメント

デジタルマーケティングが顧客マネジメントやお客様開拓に有効なのは間違いありません。しかし、それに頼り切っていいものだとは考えません。なぜなら、ビジネスはすべて人間対人間の関係の上に成り立っているからです。

単純な話、クーポンなどを付けて盛んにスマホに呼び掛けるお店に行って、店員の対応がおざなりであったりして不愉快な思いにさせられたら、二度と足は向かないでしょう。

あるいは、クラウドサービスをはじめとしたシステムやノウハウをどこの会社も導入したらどうなるでしょうか。差がつくのはその次の段階、つまり営業マンの印象なり、商品・サービスが本当に自分の求めていたものかによるのではないでしょうか。

結局のところ、どれだけ自分をお客様の立場に置き換えて考え、説明し、提案できるかにかかっているのです。

人間の感情というものは非常に曖昧模糊としており、本人でさえつかみきれないケースが多々あります。画一化したノウハウやテクニックでは補えきれないのです。また、ビジネスは世の中に貢献するものでなければならないことを常に意識していれば、お客様へのアプローチの仕方も変わるでしょう。ノウハウやテクニックでは足りないものを埋めるのが、担当者の熱意であり誠実さです。

ビジネス成功のカギは、お客様に対する深い理解に基づく「共感」と、ともにビジネスをつくりあげていく「協創」の考えです。気持ちの上でシンクロすることによって、お客様とのより深い信頼関係を築き上げることができ、成功を確信できるでしょう。

最後にもう一つ、ドラッカーの言葉を紹介しておきましょう。

組織のマネジメントとは、すごい人材を入れることや改新的なサービスを導入することのように思われているが、一番重要なのは、今ある人材と資産で何ができるかを考えることである。                  

                 

                                

あなたは「お客様の心を捕えて、結果を出せる」という揺るぎない信念を手に入れたくありませんか?