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専門コラム 第61話 信念を貫き通したいあなたへ

海賊とよばれた男の信念

出光佐三といえば、百田尚樹のベストセラー「海賊とよばれた男」の主人公のモデルになり、映画化もされましたから、ご存知の方も多いでしょう。

 

民族資本の石油元売り大手「出光興産」を一代で築いた彼には、経営者として一貫した信念がありました。

それは次の言葉に表されています。

わが社の資本はカネでなく、人間だ。カネは資本の一部だ。いちばん大切なのは人。人が第一であって、人が事業をつくり、事業がカネをつくる。カネは人についてくる。

この考えの下、戦争で何もかも失ったにもかかわらず、食いつなぐためにさまざまな事業に取り組んで、海外から復員してくる社員を含めて一人の首も切らずに大混乱期を切り抜けていきます。

  

もう一つあります。

たんなる金儲けを目指すだけでは、真の事業とはいえない。そこには、真も善も美もない。事業も究極においては芸術である。事業には、常に普遍的な国利民福を念願した、また彼岸した真理性が望まれねばならない。

この言葉に代表される行動が、「日章丸事件」でしょう。

1957年、独立はしたものの最大の財産である石油資源をイギリス資本に抑えつけられていたイランに、タンカー日章丸を極秘に派遣。

イギリス海軍の裏をかいて日本に持ち帰り、世界を驚かせました。

 

日昇丸はイラン国民から熱烈に歓迎され、その壮挙に敗戦の痛手から立ち直り切っていない日本国民は快哉を叫びました。

この一事が、その後の良好な日本イラン関係の礎となったのは間違いありません。

 

佐三は後にこう語っています。

一出光の利益のために、イラン石油の輸入を決行したのではない。そのようなちっぽけな目的のために、50余命の乗組員の命と日章丸を危険にさらしたのではない。横暴な国際石油カルテルの支配に対抗し、消費者に安い石油を提供するために輸入したまでだ。

石油メジャーにおもねたり従属したりすることなく、規制の網を知恵と才覚でくぐりぬけ、独立を貫き通した出光の、まさに真骨頂がこの事件でした。

 

信念は願望実現の後押しをする

だれでも「信念がない」と言われるより、「信念の人」と呼ばれる方がうれしく、誇り高く思うことでしょう。

 

なぜ信念が必要なのでしょうか。

 信念は願望実現の原動力である。

こう言ったのは、成功哲学の祖と呼ばれるアメリカの著作家、ナポレオン・ヒルです。

 

彼は新聞記者として鉄鋼王アンドリュー・カーネギーにインタビューしたのをきっかけに、20年間にわたって500人にのぼる成功者の研究をして「思考は現実化する(原題:Think and Grow Rich)」を著わします。同書は全世界で7000万部売り上げたといいます。

 

その中でヒルはこう述べています。

 信念は、私の思考に生命とエネルギーと行動力を与える永遠の妙薬。

 信念とは失敗の解毒剤。

 

だれでもこうしたい、これが欲しいといった願望は持っています。

しかし、願望にとどまっている限りは、大抵のことは実現しないでしょう。

それに向けて動く、行動を起こすことが不可欠です。

その背を押すのが信念だということです。

そして、信念があれば、失敗しても立ち直れると言っているのです。

 

アメリカの第15代大統領、エイブラハム・リンカーンはこんな言葉を残しています。

 自分の心に固く決意すれば、目的はすでに半分達成されたも同然だ。

 

また、19世紀イギリスの歴史家・評論家、トーマス・カーライルはこう言い切っています。

何事も誠実に行おうとする者は、確固たる信念が必要である。

何事においても世の中の同意を求め、その同意なしに己の信ずるところを貫けない者は、哀れな下僕に過ぎない。

彼に任された仕事は失敗するであろう。

 

ただし、「信念」を辞書で調べれば「正しいと信じる自分の考え」とあるように、正しい信念である必要があります。

なぜなら、間違った信念は一人よがりに過ぎず、周りはついてこないからです。

 

また、単なる頑固であっても困ります。

自分の意見を持つということでは信念と重なる部分はありますが、反面、人の意見を聞かず、ただ自分の考えに凝り固まって、それを押し通そうとするだけの偏狭さを合わせ持っているからです。

 

やはり、出光佐三の言葉にあるように、正しい信念を持ち、美しく行動したいものだと思います。

 

借り物でない信念を持とう

では、あなたは信念を持っていますかと問われて、「はい」と即答できる人はどのくらいいるでしょうか。

まして、信念を貫き通してきたと言える人は数少ないのではないでしょうか。

 

「善の研究」で知られる哲学者、西田幾多郎はこう言いました。

信念というものは伝説や理論によりて外から与えられるべきものではない。内より磨き出さるべきものである。

 

この言葉だけを聞くと、信念を持つことはとてつもなく難しく、努力と研鑽の積み重ねが必要と思われるかもしれませんが、「信念は借りものであってはだめ」ととらえれば、少しはハードルが低くなるのではないでしょうか。

 

信念を持つに至るには、いくつかの条件があります。

 

まず、自分の人生、生き方に真剣に向き合っていること。

自分の中に、譲れない大切なものを持っていること。そして、ブレないことです。

 

人の心は弱いものです。壁にぶつかったとき、「ま、いいか」「周りが反対しているから、ここは様子を見よう」といった気持ちになりがちです。

信念と思えるものを持ったとしても、孤立した中でそれを貫くには、大きなエネルギーが必要とします。

 

たとえば、セールスにおいてその姿勢を貫けば、周りからは「強引すぎる」「協調性に欠ける」ととらえられるかもしれません。

しかし、正しく美しい信念があれば、理解し応援してくれる人も現れます。その生き方、やり方がおのずと輝きを放つからです。

 

信念の力を信じましょう。500人の成功者を研究したナポレオン・ヒルはこうも言っています。

強い人が勝つとは限らない。素晴らしい人が勝つとも限らない。私は出来ると考えている人が、結局は勝つのだ。

 

多少強引に見えても、相手のためという信念に基づくビジネスなら、成功への道を踏み外すことはないはずです。

正しい信念を胸に、堂々としたセールスができるようになりたくありませんか。