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専門コラム 第60話 誰よりも粘る根性があるあなたへ

ダルマさんの教え

仏教に「只管打坐(しかんたざ)」という言葉があります。

特に禅宗の一つである曹洞宗の開祖、道元の教えを指し、何を求めるでもなくただひたすら座ることを意味します。

座ることに成りきることで、体と心が一体となることを目指します。 

 

 その禅宗を中国で開いたのが達磨大師です。達磨大師には

 面壁九年(めんぺきくねん)

という逸話が残されています。

南インド生まれの達磨大師は6世紀に中国にわたり、嵩山少林寺で、壁の前にひたすら座り続け、9年を経て悟りを開いたというのです。

 

この間、話しかけられても答えることもなく、次第に手足が腐って切り落としたことから、起き上がりこぼしが生まれたとされます。

そこまではちょっと信じられませんが、修行の厳しさはうかがえます。

 

ちなみに、この起き上がりこぼし、下におもりが入っていて、倒しても倒しても起き上がってくることから、「七転び八起き」という言葉が生まれたといいます。

粘り強いと言えば、これほど粘り強いものもないでしょう。

 

さて、達磨大師は150歳まで生きたとされます。

しかし、これほど厳しい修行を積み重ねても52ある悟りの30までしか至らなかったといいます。

修行の道の遥かなることを思い知らされますが、凡人にはとても実践できそうもありません。

 

著書「嫌われる勇気」などで知られるオーストリア出身の心理学者、アルフレッド・アドラーなどは、次のように人間の弱さを指摘しているぐらいですから。

 やる気がなくなったのではない。やる気をなくすという決断を自分でしただけだ。

 

ただ、作家の三島由紀夫は、そんな凡人の救いになるような言葉を残しています。

 決意を持続させることができるのは、習慣という怪物である。

 

一見難しそうに思えることでも、習慣化できれば大した無理なく続けることができると理解すれば、なるほどと思わされます。

もっとも、決意の中身にもよるでしょうが。

 

粘り強さと表裏一体の弱点

粘り強いといえば、一般的には長所と考えられます。

我慢強いとか忍耐力があるとも言い換えられ、さまざまな困難に直面してもそれを乗り越える努力を続けられるということですから、悪いことではありません。

 

粘り強い人というのは、さまざまな成功体験から得た自分自身に対する自信や、「自分に負けたくない」という気持ちが強いのでしょう。

あるいは、失敗をバネにして成長できる人でもあると思います。

 

ただ、別の見方をすれば、どうしようもない困難に直面したときに別のやり方を探すという選択肢を放棄する「視野の狭さ」や「要領の悪さ」を兼ね備えていると言えるかもしれません。

 

登山でひたすら頂上踏破を目指す人のことをピークハンターと言いますが、生きて帰ってくるまでが登山です。

頂上直下で登頂を断念したケースは数えきれないほどありますが、一方で、引き返すという選択肢を放棄して命を失った登山家が多いのも事実です。

 

実現可能性との折り合いをつけるというと打算的と思われるかもしれませんが、特にビジネスにおいては求められるセンスでしょう。

目標達成には、一途さと同時に柔軟性が求められることがあるのが現実ではないでしょうか。

 

また、粘り強い人は自分に自信があるため、それが過信になって無理をしがちです。

無理は自分の心身はもちろん、周囲との関係においても悪い結果を招くことがあります。

 

結局は、一つのことに邁進する場合は同時に、自分と自分が今抱えている問題を客観的に見る冷静さをどこかに持っていることが必要なのでしょう。

 

要はバランスということでしょうが、これも言うは易し行うは難しですね。

 

何かを成し遂げるためには、そのことしか考えられないという“狂い”が必要となる。

 

これは「マネジメントの父」と呼ばれる経営学者、ピーター・ドラッカーの言葉ですが、一方でこうも言っているのです。

 

これまでの実績など捨てなさい。自分の強みを過信した者は、生き残れません。

 

大切なのは、「これから」に向けた変化と努力

先に三島由紀夫の言葉を紹介しました。

そこに出てきた「習慣」は、「アミエルの日記」で知られる19世紀のスイスの哲学者、アンリ・フレデリック・アミエルの有名な言葉にも登場します。

心が変われば行動が変わる

行動が変われば習慣が変わる

習慣が変われば人格が変わる

人格が変われば運命が変わる

運命が変われば人生が変わる

 

心、行動、習慣、人格、運命、人生の中で、何が最も変えやすいかと考えると、私は習慣かなと思います。

習慣が変われば行動も心も変わってくるかもしれません。

 

いずれにしても、どう変えたいかが問題です。

何かを変えたいと考えるときは、仕事や人間関係で大きな壁にぶちあたっていたり、自分をもう一段成長させたいという気持ちが少なからずあったりすると思います。

 

自分が成長すれば、仕事や人間関係の壁も乗り越えられる可能性が高まるはずですから、大切なのはやはり、自己成長であり自己修養ではないでしょうか。

軽々に悟りを開くなどとは言えませんが、「一皮むける」ことなら、粘り強いあなたなら可能でしょう。

 

その前提として求められるのが、決断です。

〝これから〟何をしたいのか、何を求めるのかを明確にしないと、あなたの努力も中途半端に終わるでしょう。

 

ドラッカーも次のような警句を発しています。

たいていの経営者は、その時間の大半を「きのう」の諸問題に費やしている。

大切なのは今、であり、これからです。

 

一方、アメリカの有名な投資家であるウォーレン・バフェットには次の言葉があります。

価格とは、何かを買うときに支払うもの。価値とは、何かを買うときに手に入れるもの。

 

価値は経済的なものに限りません。

自己成長も大きな価値であり成果となるでしょう。

そして、それを手に入れるのに遣うのも、お金ばかりではありません。

そのために費やす時間や努力も十分な対価になり得ます。

 

確固たる意志を固め、あなたのさらなる成長のために貴重な時間と労力を投資したくありませんか。