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専門コラム 第91話 営業の本質って何?『営業とは道である - 本物の営業マンを目指すあなたへ –』を読んで

 

『営業とは道である - 本物の営業マンを目指すあなたへ – 』の著者、林正孝氏は、長年MDRT会員を連続し、現在もこれを継続中というソニー生命の筋金入りのトップセールスマンのひとり。

 

現在は経営コンサルティング会社・㈱WADOウイングスを設立し、古巣ソニー生命からプレミア・エージェンシーの権利を取得し、経営コンサルタント会社として営業活動を続けています。

 

本書『営業とは道である - 本物の営業マンを目指すあなたへ –』(アイバス出版 2017 06/02)は、林氏の営業人生を回顧するとともに、全ての営業マンに営業職の素晴らしさや仕事に対する誇りを、読み取ってもらいたいとの思いで書かれたもの。

興味のある方は、営業本の良書の一冊なので、ぜひ手に取ってみると良いでしょう。

 

営業の本質って何?『営業とは道である - 本物の営業マンを目指すあなたへ –』を読んで

林正孝ってどんな人?

 

初めに断っておくと、林正孝氏は初めから営業に向くタイプのバリバリの営業マンです。

同じ営業でも、当コラムでご紹介したことのあるドクターツールの小野博史氏とは「違うタイプの人」だということは、最初に断っておきます。

 

ちなみに林正孝氏を始めとする生保のスタープレイヤーらは、年収は最低でも 5,000 万円を降りません(1 億を超す人も決してめずらしくはありません)。

 

林氏は今年で 58 歳。

中央大学法学部を卒業後、ソフトウエア会社でのシステム営業を経験しますが、そこでプログミングの難しさを知り、自分にも向かない仕事があることを知ったそうです。

 

システム営業に見切りをつけた林氏も新天地のリクルートに転職すると、1 年 3 カ月という驚異的スピードで、主任、マネージャーへと昇格します。

もちろん人の何倍も努力しましたが、それ以上に営業マンとしての素養に気付いたようです。

 

本書では、24 時間、枕に頭を付けず「寝ないで仕事」したと当時を振り返りますが(考えてみれば、林氏は根っからの負けず嫌い。

学生時代もスポーツ用品店のアルペンなど、営業系のバイトをたくさん経験しています)、林氏は次のソニー生命でも未経験ながら(おそらく初年度より)MDRT会員の成績資格を取得しています。

 

そんな林氏もソニー生命での最初の 2 年間、相当追い込まれたと告白しています。

 

原因のひとつは、定期付終身保険に対する御自身の錯誤から、一時的に言語障害を引き起こすまで悩む事態にも陥ったようです。

ただ、たとえどれほど追い込まれようとも、これに関係なく見事な成績を残します。

 

なお当時、林氏は、毎月 37 万円の住宅ローン返済を抱えていたと言います。

ソニー生命では当初2年間は手取り 26 万円と言うことですから、当然ながら保険営業に、相当気合を入れて取り組まれたのでしょう。

 

冒頭、林正孝氏を「筋金入りのトップセールスマン」と表現したのは、そう言った苦難を乗り越えての意味を込めました。

 

保険営業マンが「イチロー」だったら!?

 

ただ本書には“保険営業のトップセールスマンが明かす”的なセールスの奥義、テクニックについては一切書かれてはいません。

多分、林氏のセールスは非常にベーシックなスタイルだったのだろうと思います。

それは同時に林氏が、欧米式のベーシックなセールス技術を「ストレスなく実践できるレベル」にあったのだと想像します。

 

「欧米式のベーシックなセールス技術」とは、外資系保険営業では一般的な「どのように紹介をつなげていくか」です。

これを保険業界では「XYZ理論」と言います。

しかし言葉でいうほど、紹介の連鎖は上手くつながるものではありません。

これをスムーズにつなげるには「この人物だったら、間違いなく紹介したくなる人」という前提が必要だからです。

 

十中八九、ほとんどの営業がここでストップしてしまいます。

そして多くは志半ばで、保険営業の現場から去って行きます。

しかし、林氏は分かりやすく「イチロー」だったらと、彼の名を挙げています。

 

顧客の年代にもよるでしょうが、仮に「イチロー」が保険営業だったらどうでしょう。

紹介の連鎖は止まらないのではないでしょうか。

もしくは彼なら「自分の知人や友人に合わせても構わない」と、多くの人は考えるのではないでしょうか。

 

それではどうすれば、自分が「イチロー」と同類の人間になれるのか。

ここが問題です。

 

そしてその答えは、第 5 章の【営業マンこそ「仕入れ」が必要】にまとめられています。

 

営業マンこそ「仕入れ」が必要

 

第 5 章で林氏は、営業にとって「仕入れ」とは、知識と経験智と述べています。

 

この最終章で林氏は、医者との比較で、営業マンの価値について言及しています。

 

なぜ医者は医者というだけで尊敬されるのか。

それは専門分野の知識と経験智を持ち合わせているからです。

ないしは、知識と経験智を持っていて当然と患者から思われているからです。

ですから初対面でも医者は尊敬され、また信用されるのです。

 

同様に、知識と経験を人より多く所有している営業マンは、顧客から信用されます。

逆にいうと知識と経験が浅い営業マンは、人が離れていきます。

ましてや、自分の大切な知人や友人に合わせたいとは思わないでしょう。

 

だから知識と経験智を少しでも多く持てるように、私たちは日々研鑽しなくてはならないのです。

 

特に林氏は知識もさる事ながら、経験智の重要性について書いています。

 

林氏は海外ファンドも自分で買い、海外に出向いて実情も見聞きしているそうです。

そして海外投資をする前に、海外の実情にも詳しい林氏から、情報を得たいと顧客が集まって来るそうです。

 

多くの営業マンは「仕入れ」の大切さに気付いていません。

しかし営業にとって大事なことは、最終的に「圧倒的な専門家」かどうかなのです。

これは筆者も、日頃のコラムのなかで繰り返し書いていることです。

 

心理戦やNLPも結構ですが、そんなことよりずば抜けた専門知識と裏づけとなる経験智こそ、最終的に営業にとって財産になります。

しかも「圧倒的な専門家」になることは、それほど難しいことではありません。

仕事を仕事と思わなければ良いだけです。

 

学生時代に音楽にハマった経験がある方はわかると思いますが、たとえば、ギターの腕はともかく、誰でも簡単に「超ギターオタク(=圧倒的な専門家)」にはなれます。

仕事も一度そのぐらいハマってみれば良いのです。

 

この本は「それに気付かせくれる」という意味で、営業の本質が存分に明かされており、おすすめの一冊です。