営業職に特化した人事考課制度の指導機関

〒150-0044
東京都渋谷区円山町6-7 1F

TEL : 03-4405-8949

専門コラム 第262話 住宅会社が「商品ラインナップ」や「品質」にこだわると良いこと

    

少し前に『【前編】展示場・現場見学会に再来場を生み出す5つ要素とアイディア(R5.2.14投稿)』という記事を上げました。
その中で「ラインナップについては、商品単価や契約形態の違いから、あまり神経質にならなくてもいい」と書いています。

ただ誤解しないでほしいことは、商品の「ラインナップ」や最初に登場する「品質」を、蔑ろにしても良いとは言っていません。

むしろろ商品の「品質」や「ラインナップ」に手を掛けることは重要な作業ですし、特に「品質」にこだわった会社は、営業活動が非常に楽になります。 今日はそのことについて述べてみたいと思います。

  

住宅会社が「商品ラインナップ」や「品質」にこだわると良いこと

1 「ここの家は他所の建物と何かが違う」と称賛

 

初期のコラムでも書きましたが、大手ハウスメーカーを退社した後、地元資本の工務店に在籍していたことがあります。

その工務店は地元では有名で、家が好きな人には「家を建てるなら、一度は見学会に行ってみたほうがいい」と思って貰える、評価の高い先鋭的な工務店でした。

そして営業マンの平均年齢がとにかく若い。

営業部長は 40 代前半の男性で筆者とは一回りほど年上に当たりますが、それ以外の営業マンは、揃って20代~30代、設計・工事も30代前後。つまりこの工務店の中心に居たのは20代・30代の若者です。

ただそんな若者が作る家は、非常によく考えられており、性能の面でも感性の面でも、その当時からずば抜けていました。そして自身も「そんな皆が羨む家を売ってみたい」。
そんな気持ちで、この工務店の門を叩きました。

この工務店こそ、「品質」や「ラインナップ」に手を掛けた典型的な住宅会社です。

思い出すのは、地元北海道の木を使った家具作りで有名な家具メーカーの担当者が、「ここの家は他所の建物と何か違うんだよね……」と評価してくれたことです。

また噂には聞いていましたが、見学会を開催すると、お客さまのイヴェントに対する熱量がすごく伝わってきます。
もちろんこの工務店で家を建てられる人は、資金的に余裕がある方に限られ、せっかく来場されても、予算が合わない方が多くいらっしゃいます。
それでも一度は参考に見ておきたいという思いで、連日数多くの住宅ファンが押し寄せました。 提案した家に主張があると「こうも違うのか」ということを、思い知らされたとでも言いましょうか。
しかしこれが可能にしたのは――まぎれもなく、ここの社長の才能(住まい対する視座の高さ)も大きいのですが――会社創設時の中核メンバーが、ラインナップや品質にこだわって住宅を構成した点が挙げられます。

   

2 「品質」には「商品に関する制度」が必ず含まれる!

 

ただ日本の住宅市場は、多くの工務店が大工さん出身の方がほとんどで、品質やラインナップにこだわりを持つ方は少数派、またそのような考え方をする方が「そもそも居ない」のだとも言えます。

ただ住宅や「商品に関する制度」がきちんと練られた会社は、たとえ営業が不在でも、集客できる場合が少なくありません。
品質や設計力に関心がある方は、あらためて自社の商品について再考してみるといいでしょう――筆者もこの工務店から、本当に色んなことを学ばせていただきました。

なお、ここで言う「品質」とは、住宅本体の品質・性能に関することだけではありません。

以前もコラムに書きましたが、「図面・プレゼン資料の精度」、「契約書・関連書類の充実度合い」、「保証やアフターの制度がしっかり整っているか」なども、すべて「品質」に含まれます。先程の「商品に関する制度」というのが、上記の3つです。

またこの点が不安だと、いくら商品(家・建物)が良くても、お客さまは飛び付いてはくれません――特に現在のお客さまは、親世代が「商品に関する制度」でかなり苦労しています。気になるのは無理もありません。 当然ながら、この若者ばかりの建築集団でも「商品に関する制度」の面はかなりしっかりしていました。

   

3 確かに営業は他社よりラクにはなるけれど

 

なお冒頭の一節で、「品質」にこだわった会社は「営業活動が非常に楽になる」と言いました。

事実この工務店のように、商品が他社とうまく差別化されると、顧客のポジショニングがはっきりします。これにより、営業活動が俄かに進めやすくなります。

また他社との差別化がうまく進み、熱烈なファン化現象が生じると、住宅会社では当然だった「競合対策」から解放されます。競合がなければ「営業が随分楽になる」と知ったのは、実はこの工務店に加わったことがきっかけです。

ただ競合がなくても、営業にはやらなくてはいけない事があります。それはお客様をどれだけ心地よく、ゴールまで導くかということです。

その点でいうと、この工務店の社長は営業に求めるレベルは常に高く、特に若いスタッフに対しては厳しい方でした。
ただ厳しい反面、自分を信じて付いてきたスタッフは「最後まで面倒をみる」という優しさがありました。それは「営業マンは使い捨て」というこの業界の闇と、明らかに一線を画していました。

たとえばこの住宅会社には、大手メーカーのように、会社が提供する「商品」のパンフレット類はありません。
そこで当時この工務店では、お引渡ししたOB客の暮らしや大工・職人の仕事ぶりをフューチャーして、営業部の課長が「人間」を写真撮影してパンフレットを用意していました。もちろん内容や文章も、非の打ち所は見当たりません。

また、それだけ説得力のある文書を作るには、営業マンも建築のことが分からなければいけません。

それに気づいたのは、当時上司だった営業リーダーの現場案内トークに聞き耳を立てた際です。
そのとき彼が繰り出す言葉の端々に、ただの若手セールスマンにはない雰囲気があったことを、今もはっきり覚えています――何なら筆者がお客さまとして、彼の話をずっと聞いてみたかった……。

また見学会が出来るまでの間は、その資料作りも営業チームに任されていました。
つまり、こうした資料作成を小煩く指導することで、営業が商品にも詳しくなる事を、社長自らが仕向けていたのです。

契約を取ること自体は、他と比べると楽かもしれません。
ただそれ以上のこと――それは、お客さまへ「感動」「知識」「情報」を与えること――を、社長は営業に求めていたのです。

いま当時の彼らが、どのようにしているか……

まだみんな住宅ビジネスに携わっているのだろうか? 
どういうわけか自分が退職したこの時期になると、かつてのメンバーのことを思い出します。

  

  

   

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。

また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。