専門コラム 第379話 ある住宅会社のニュースレターがあまり振るわなかった理由

先回、ある工務店が、ニュースレターを作成したことを伝えました。
そしてそのニュースレターは、効果があまり芳しくなかったこと、またその理由についても簡単に記したところです。
ただそこに書かれていることだけが、その会社が発行するニュースレターがあまり振るわなかった理由ではありません。
というのも、そのニュースレターは決定的とも言える要素を欠いていたから。
またこれは、内容で失敗する方の多くが陥る共通点です。
そこで今回は同じ過ちを繰り返さないケーススタディとして、レターがあまり振るわなかった理由を皆さんと共有したいと思います。
なお、当該工務店名は、便宜上「Oハウジング」という仮名を使わせてもらいます。 また Oハウジングの背景等は、最初のチャプターに記しています。
結論を急ぎたい方は、二番目のチャプターから読む進められると良いでしょう。
ある住宅会社のニュースレターがあまり振るわなかった理由
O ハウジングは進取の気性に富む地域優良工務店
O ハウジングは、住設機器の卸し会社の元営業マンが、夫婦で立ち上げた工務店です。
この会社は、地域では比較的名前の通った会社でした。住宅の性能にも通常の工務店にはない先鋭的な姿勢を持っています。独自の断熱工法を用い、高性能住宅を堅実に建てており、このような姿勢はいまも変わってはいません。
また、もとウレタンパネル工法ということで、 O ハウジングの住宅の価格帯は比較的高いほうに属します。結果、O ハウジングのオーナーさまは、夫婦共公務員や医師、経営者といった、年収にも余裕のある方が多かったと記憶しています。
そんなO ハウジングは、社長・専務共々進取の気性に富み、IT関連のシステム導入にも意欲的でした。
またコンサル会社からニュースレターの導入も提案されてようで、女性の事務社員はパソコンを使ってレターの作成手順も、細かく指導されていたようです。
なお、筆者が O ハウジングを素晴らしいと感じたことは、大工さんを数名、社員として雇い、現場監督と設計社員をきちんと育てていたこと。
そして不定期ながら、引き渡し後のアフターを小まめに行っていたことも良い点です——O ハウジングには素晴らしい点が沢山ありました。
現在は大手ハウスメーカーを退社した息子さんが、工務店の営業を統括していると聞きます。
O ハウジングは、今後も更なる発展が期待される地域優良工務店と言っていいと思います。
誰もが見落とす「日常を切り取る」こと
ただ当時のO ハウジングが発行するニュースレターは、効果のほうはあまり芳しいものではありませんでした。
そもそもニュースレターからどういう効果が得られるか。
それすらも、正く知らなかったのではないでしょうか。
考えようによっては、
「出しておけば良いこともある」程度に、ニュースレターを解釈していたかもしれません。
しかしこのコラムを読んでいる方なら知っているでしょう。
ニュースレターは想像以上にパワフルなツールだということを。
ではどの点を直せば、ニュースレターは本来の効果を発揮するのか?
結論はたった一つ。
冒頭の挨拶文、また巻末の編集後記で、執筆者の日常を切り取ること。
もしくは文面に隠れた素顔を覗かせることにあります。
もちろん前回の投稿でも書きましたが、
本文の内容も、多少変えなければいけないところもあります。
ただ、そんなことより真っ先に直したほうがいいのは、冒頭の執筆者による挨拶文です。
理由は、ここが、誰もが最初に目にする文章だからです。
でも、大抵が堅苦しい挨拶文となります。
日常を切り取るとはそういうことではありません。
必要なのは、他愛も無いエピソードです。
間違っても堅苦しい挨拶文や、忘年会の冒頭の件で出てくる陳腐な言葉ではありません。
しかし残念なことに、O ハウジングのニュースレターはここがいつも同じでした。
今だから言えることとして、ここが直らない限り、出しているニュースレターがヒットすることはありません。
皆さんの中でも気づく点があれば、すぐ直しましょう。おそらく読み手の反応が違ってきます。
「売り」の匂い消すということ
二つ目の修正点。
それは、ニュースレターでは必ず「売り」の匂い消すということです。
さすがにここまで、当時の O ハウジングが出していたレターでやっていたかは記憶していません。
ただニュースレターを初めて出す方が陥りやすいのも、商品情報とともに「売り」の匂い消し忘れることです。
ちなみに筆者は、「売り」の匂いの消し忘れだけは絶対に避けます。なぜならセールスする意志を伝えたければ、ニュースレター以外の用紙にまとめれば、何の問題もないからです。
セールスレターをひとつの封筒に同封しても構いません。
これがニュースレターでセールスする意志を伝えてしまうと、
ニュースレターの価値が、すべて無に帰す可能性があります。
こればかりは絶対に避けるべきです。
O ハウジングのニュースレターは、いわゆる“アラカルト型”でした。
多分コンサルからも、ニュースレターで「売り」の匂い消すということは、指導されていたと想像します。
ただ当時、営業も兼務していた社長は、うっかりそのことを忘れることも考えられるでしょう。
皆さんの中にも、見直す必要はないでしょうか?
そして、ニュースレターを発行していて思い当たる方は、確認してみると良いでしょう。
健闘を心から願っております。