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専門コラム 第229話 「顧客を選び取る」ことの重要性とは?

    

ダイレクト・レスポンス・マーケティングとは、広告での表現を工夫することにより、自分から売り込みに行くのではなく、興味のある顧客から手を挙げてもらう方法である。

「神田 昌典. 60分間・企業ダントツ化プロジェクト(ダイヤモンド社)」

これは神田昌典氏の書籍『60分間・企業ダントツ化プロジェクト*1』の、あとがきに出てくる一節です。

「顧客から選ばれたけれれば、自ら顧客を選び取る」。

これも神田氏が、初期の書籍で唱えている、いわゆる「神田イズム」のひとつです。

そしてこうした思想は、

「商売や営業で大切なこと、それは広く数多の人に受け入れられることより、自分に合ったお客さまを自ら選び取ること」

につながります。

またこのことは、筆者が見てきた多くのトップセールスが実行しています。
さらに、自分の営業体験を本に書いている方のほとんどが、「顧客から選ばれたけれれば、自ら顧客を選び取る」ことを、その人なりの表現で書いています。

今日のコラムは、久々に「顧客を選び取る」ことの重要性について書いてみようと思います。

  

「顧客を選び取る」ことの重要性とは?

1 『営業マンは断ることを覚えなさい』から学べること

 

「顧客を選び取る」と聞いて、筆者は思い出す書籍があります。

それは『営業マンは断ることを覚えなさい』(明日香出版社 2003/2/8)という本です。

現在は「知的生きかた文庫」から文庫本として出ているようなので、新たに求められる方は文庫として入手できるでしょう。

アマゾンでのレビュアーの方も「非常識なことをタイトルにしており、読み始めることを躊躇するかもしれない」(2014 年 7 月 5 日に日本でレビュー済)としていますから、この本が単行本として出版された当時のインパクトは仲々のものでした。

しかし書かれている内容はきちんとしたもので、何より著者の石原 明氏は、1985 年より外資系教育会社の日本代理店を経験後、セールス部門で日本 1 位、世界約 6 万人のセールスマンの中で常にトップクラスの実績を収める凄腕営業マンです。

そしてフルコミ営業として活躍後も、最高の成果を発揮した営業管理職に贈られる「セールス・マネージャー世界大賞」を受賞しています。つまりセールスマンだけではなく、セールス・マネージャーとしても世界のトップに立たれた方です。

当時、この本に書かれていることを、筆者も全て実施したわけではありません。
ただ、住宅営業マンとして少しずつ「売れる」ことを実感するに従い、本書に書かれていることが紛いの情報などではなく、正しい情報ということが分かりかけてきました。

もしあなたが顧客に振り回されている営業マンだとしたら、いち早くそのレベルを卒業し、「どうすれば主導権を持って販売にのぞめるか」を、本書をもって身につけらるといいでしょう。

著者からのコメントにもありますが、セールスという場面ではお客さまと同じく、営業にも「断る権利」というものがあります。仮に会社が皆さんに、営業の「断る権利」というものを許していなくても、です。

なぜなら会社の代表者は、自分に来た仕事を自ら選んでいるからです。
言い方を変えると、やって損になる仕事を自ら進んで選ぶことはないからです(このことは、多分、次のコラムで説明します)。その意味ではセールスマンも同じではないでしょうか?

また石原氏のように外資系のトップ営業でも、「売れそうでない相手に無理にセールスしてはいけない」(=売ってはいけない)お客さまが必ず存在します。

営業という仕事は、こういうお客さまからきっぱり手を切り、自分に合ったお客さまを自ら選び取ることが、何より優先されるのです。

   

2 「断る営業」「顧客を選び取る」は一切売り込まないセールス

 

筆者がこのコラムで最初に紹介した本に『営業引力の法則』(徳間書店 2003/11/21)という本があります。『営業マンは断ることを覚えなさい』と同じ時期に購入した本ですが、今も大事に手元に残っています。

著者の五十棲 剛史氏も、もちろん「顧客を選び取る」派に属する営業マン(執筆当時、船井総研のトップコンサルタント)です。

本書の 3 章「大公開! これがイソミズ流『アトラクティブセールス』」で、このような一説があります。

成功事例を示しても興味関心がなかったり、何かにつけて難癖をつけてきたりするパターンです。どうやら価値観が違うかな……と思う相手です。

そう思ったら、商談は終わりです。遠慮なく、終わりにしてください。

『営業引力の法則』p65 より抜粋

そして次のように続けます。

こうしたお客様に一縷の可能性を求め追いかけてしまうことの失敗は、もう何度も繰り返しお伝えしてきました。もう、追いかけてはダメなのです。どんなに商品がよくても、相手には魅力的に見えていないのですから。あなたの貴重な時間は他のお客さまのために使うべきです。

『営業引力の法則』p65 より抜粋

またこの部分もテーマとは微妙に違いますが、本コラム全体のテーマと合致することから、あえて引用しておきます。

かなり強気な迫り方なのですが、こうすることで相手が本気なのかどうかが分かるのです。「いや、もう一度打ち合わせして」なんて話が出ることもありますが、それは断ります。スケジュールが一杯なのです。そんなことなら他のクライアントのために時間を使いたいのです、とお伝えします。
 ここまでするには大きな理由があります。『アトラクティブ・セールス』は一切売り込まないセールスです。「売ってはいけない」のです。あくまでお客さまが自分の意思で「買いたい」と思って購買していただくセールス手法なのです。

『営業引力の法則』p65 より抜粋

実際、五十棲氏は仕事があまりなく、いわゆる「ヒマな時代」から、素知らぬ顔で「忙しいこと」を強調してきたと書いています。という訳で、五十棲氏は「売らずに売る」ということを、かなり早くから実践してきました。 その意味でこの『営業引力の法則』という本から、深い気づきを得られるでしょう。

   

3 商品の特性による「顧客を選び取る」ことの大切さとは?

 

最後に注文住宅の観点から、「断る営業」「顧客を選び取る」ことの大切さをお話ししておきます。

注文住宅という商材は、公的ローンの誕生を背景に、日本の高度成長期に、急速に拡大した商品です。

しかし急速に拡大したが故に、注文住宅自体が、お施主様によっては誤って理解されている節があるようです。

ここではあまり細かくは説明できませんが、例えば二世帯住宅をご希望のお客さまでも、お子様世帯が打ち合わせに全く参加せず、図面が確定してしまう場合もあります。

また注文住宅では、住宅の細部についても、打ち合わせによって確定させることが前提です。
それなのに請負契約が済むと、ほとんどの家族が打ち合わせに現れず、なかには定年退職したお父さんしか、打ち合わせに参加しないような場合もあります。

そしてこういう家は建ててからが忙しく、クレームやら追加工事などに、営業や職人が奔走しなければいけません。このように商品の特性をしっかり理解しないまま、注文住宅を建ててしまうと、お客さまだけではなく営業や会社も不幸です。

それを未然に防ぐには、やはり別の観点で、「顧客を選び取る」ようにしなければいけないでしょう。

幸い近年の業界では、お客さまの負担を軽減した「仕様の単純化」が進んでいます。
ただ「断る営業」「顧客を選び取る」ことの大事さは、こうしたところにも表れてきます。

特に営業は、いちばん最初にお客さまを判断しますから、なおさら注意が必要です。 さて、次回のコラムでは「顧客を選び取る」ことの重要性について、さらに深掘りしていきます。

 

 

  

  

 

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。

また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。