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専門コラム 第166話 「売る営業」から「売らない営業」への変化と本質

  

本コラムでは、従来型の「売る営業」から「売らない営業」というアンチテーゼを敷いてきました。またそのつもりです。

 

ここでもう一度、「売らない営業」とは何か、またその本質には何があるのか、多分一回では終わらないと思いますが、原点に立ち返ってみようと思います。

  

  

「売る営業」から「売らない営業」への変化と本質

1 営業は売ろうとした時、説得し始めた時、失敗に向かって進んでいる!

   

営業は売ろうとした時、説得し始めた時、負けが決まる。

つまり失敗に向かって進んでいることを意識しなければいけません。

 

このことは直近の記事――『営業において「質問力」がなぜ重要なの?【続編】』――で、人間の脳の基本的特性であるオートクラインと、「質問」「沈黙」をセットにする関係が理解できると、自ずと納得がいくと思います。

 

また幾分古くなりますが、『営業色を強く打ち出してはいけない!②』で、実演販売の名手、レジェンド松下氏が、俳優・タレントの黒羽さんに対して

売ろうとしている焦りが見える

売ってやろうオーラを出してはいけない

との、コメントを残していることからも分かるのではないでしょうか。

 

記事にあるとおり、営業が「売ってやろうオーラを出してはいけない」と言うのは、お客さまは「買わされることに敏感に反応する」からです。

 

敏感に反応するぐらいであればまだ良いのですが、「売ってやろうオーラを出す」営業マンは、世間的にはやりたくない仕事の上位に位置しています。

しかもこの現象は日本だけではなく、米国でも変わりないようです。

 

特に個人を相手にする BtoC 営業は、販売によるプレッシャーが、一般消費者にも販売する側にもかかってきます。

恐らくその際たるものは、保険営業でしょう。

 

やったことがある方なら分かると思いますが、保険の世界では外務員を 100 人集めても、1 年後も残る人は――ばらつきはあるにせよ――数名程度と言われています。

 

逆に言えば保険会社が外務員に提案する「友達をも失いかねない」その営業方法は、実はその程度しか効果がありません。

 

そして保険業界ほど使い捨てではありませんが、住宅会社でも営業は、売れなければ去っていかざるを得ません。

酷い会社になると、就職雑誌に常にエントリーされたままの会社もあります。

営業が使い捨てということは仕方ないとしても、このようなことが令和の時代でも通用する正しい働き方かと言われると、謂れのない違和感を禁じ得ないのは皆さんも同様でしょう。

  

  

2 『営業引力の法則』が示す「プッシュ型セールス信仰」へのわだかまり

  

そんなとき、運命的な本との出会いがありました。

 

それはこのコラムでも過去に 2 度ほど紹介している、五十棲 剛史 著『営業引力の法則』(徳間書店  2003/11/21)です。

 

この本の凄いところは、読者に「売る営業」から「売らない営業」へと、営業に対する仕事の価値観を変えてしまうところかもしれません。

 

「売らない営業」というものに興味があれば、アマゾン等で手にされるといいでしょう――新品2600円、中古なら送料込みでも 1,000 円もしないで手に入るはずです。

 

『アトラクティブ・セールス』は一切売り込まないセールスです。

「売ってはいけない」のです。

あくまでお客さまが自分の意思で「書いたい」と思って購買していただくセールス手法なのです。

その決断が本気でなければ、継続的な関係は望めません。

だからこそ、「自分で買うと決めたのだ」と再確認してもらうのです。

『営業引力の法則』第 3 章より抜粋

 

この本から得たものと言えば、広い意味でトップセールスと言われる人の考え方を知れることでしょうか。

 

本当のトップセールスは、もともと「売らない営業」の実践者なのです。

 

そして本書は 1 章から、“あなたは「プッシュ型セールス信仰」にだまされていないか?”ということを問い正しています。

 

残念ながらプッシュ型セールスは時代とずれてしまった旧世紀の遺物。

そのやり方にこだわっていては売り上げは上がりませんし、何よりあなた自身がダメになってしまいます。

 

本の内容は現状とそぐわない箇所も出てきます。

 

ただ、こうしたことを素直に書ける人が少なくなった今、本書に触れる価値は大いにあります。

 

 

3 セールスとは、実はタイミングが全てを支配している

 

また『営業引力の法則』では同じ章で、セールスするタイミングについて、図入りで解説しています。

 

つまり本書では、お客さまを追いかけて失敗するのに2パターンあるとし、

 

  1. 「気持ちの盛り上がりが足りないお客さまを追いかけてしまう」失敗
  2. 「カーブが低くなってしまっているお客さまを追いかけてしまう」失敗

 

1.2.、どちらの場合も、セールスするタイミングではないと教えています。

 

恋愛と同じです。追いかけるべき時を逃してしまって、気持ちが冷めてしまった後でいくらアプローチしても……うまくいきません。

恋愛は自分(の気持ち)を売る、というセールスとも言えます。

理屈は基本的に同じなのです。追いかけるならホットなお客さまだけにしたほうが効率のいいセールスにつながります。

 

後に神田昌典氏の本で同じ場面に出くわし、1.2.どちらの場合でも、営業は「害虫のごとき反応を受ける」のに対し、ホットな場面では掌を返したように、「専門家」として話を聞いてくれる。

 

こんなことを経験している営業も、実際に多いのでは……

 

いかがでしょう。

 

少しは「売らない営業」について興味のようなものが出て来たでしょうか?

 

またあなた自身は、従来型の「売る営業」派でしょうか? 

 

それとも強いて言うなら、ここで紹介した「売らない営業」派でしょうか?

 

もちろん本人の営業法ですから、押し付けはご法度です。

 

しかし、日々の営業活動を通して「何かが違う」と漠然と感じている方は、これから話す「売らない営業」を試してみるのもひとつです。

 

次回は、より本質に迫っていければと思います。

  

 

  

 

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。

また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。