専門コラム 第84話 自主現場見学会のススメ
本コラム第80話『見込み客を購買に動かす「仕掛け」はどのように準備する?』の中で、私たち営業はニュースレターの配布と同時に「顧客が動きやすい仕掛けを作るべき」との記事を上げました。
また、その「仕掛け」とは、完成現場のお披露目(つまり現場見学会)でした。
お施主様によっては「広告を入れてもらっては困る」と断られる場合もあるので、見せ場の多い現場でも一般公開できない家があります。
しかし、そのような考えを持つお施主様の中でも、「〇〇さんのお客さんだったら、どうぞ見せてあげて下さい」と言って下さる方もおられます。
わたしの場合は、そんなお施主様のお言葉に甘えて、いわゆる「自主現場見学会」をよく行なったものです。
「自主現場見学会」とは、一般公開を断るお施主様から一部限定付きで公開を許された、ある種プライベートな現場見学会のことです。
筆者が勝手にそう名付けています。
今回は、あまり取り上げられる機会が少ない「自主現場見学会」について解説してみましょう。
自主現場見学会のススメ
自主現場見学会の目的は管理客のランクアップにある
自主現場見学会と似たようなことは、すでにやったことがある会社も多いはずです。
なぜなら媒体広告を使わない条件でなら、見学者を限定して現場公開することを了承するお施主様は、ある一定の割合で存在すると想像するからです。
幸い、現場を公開したことで窃盗などの被害にあったと言う話は、これまでのところ聞いたことがありません。
ただしプライバシーの観点からも、広告を打って不特定多数の見込み客に自分の新居を公開することを、出来るなら避けたいと思う施主様は珍しくありません。
(にも拘らず、たとえ限定的でも現場見学会が行えるのは、ひとえにお客様が会社や営業を応援してあげたいという気持ちの現れです。)
なお、ここでの自主現場見学会は以前にもお伝えしたように、ニュースレターを送っている自分の管理客に、何らかの行動を促す「仕掛け」づくりの意味があります。
そのため正しい自主見学会の位置づけは、新規客を増やす場ではなく「見込み客のランクアップ」にあります。
逆に言えばニュースレター等で中長期客を積極的に育成していない営業、もしくは新規客を増やしたいだけの営業には、今回説明する自主現場見学会を行う意味はありません。
新規を得るだけなら、レギュラーの住宅展示場だけで事足りるからです。
ちなみに筆者の頃は、たまたま営業の人員が少なく、私しかニュースレターを定期発行していませんでした。
よって自主現場見学会というと、大抵は筆者一人か気の合う後輩の営業、または女性の事務スタッフ 1 名に応援を頼んで開催していました。
たしか自主現場見学会のことを「一人見学会」と呼んだりもしていました。
ただし現在では、ニュースレターを使っている営業は過去に比べると増えています。
そのため「一人見学会」と言った風情は、かなり珍しくなっているかも知れません。
自主現場見学会は「スペシャル感」を大事にしたい
冒頭でもお伝えしましたが、ニュースレターの読者から見た自主現場見学会の魅力は、ある種プライベートな現場見学会というのがひとつの持ち味です。
そのため毎回、告知文には何らかの「スペシャル感」を演出しました。
もちろん来ていただいた読者の方には、「時間を割いてでもこの家を見に来て良かった」という満足感を感じていただいたと自負しています。
もちろん全部の現場が「見どころいっぱいの現場」という事ではありませんでした。
ただ注文住宅の場合、家族構成によっても表現できるライフスタイルがまちまちです。
この「まちまち感」を上手く切り取ることが、自主現場見学会を成功に導くポイントになります。
逆にお施主様の厚意で限定公開を許された場合でも、現場によっては自主見学会に向かない住宅がありました。
したがって、見せられる現場を全て自主現場見学会に利用させてもらった訳ではありません。
これは自主現場見学会を、多くの場合、私一人で行なっていたからということも関係しています。
筆者の自主見学会は、基本的に私一人で対応していましたので、来場者が重なるとどうしても満足いく対応ができませんでした。
これが自主現場見学会の唯一の欠点なのですが、筆者はこの欠点を補うため、「現場を見学できた」だけで「良かった」と思わせることを開催の最低条件としていました。
皆さんが自主現場見学会を行う場合は、必ずしもこの限りではありません。
ただ一定の「スペシャル感」を上手く演出できると、お客様も飽きずに「また見てみたい」と思ってもらえることになります。
自主見学会でランクアップした顧客は「濃いお客様」
顧客が再来場してくれる確率が高まるのは、日頃のニュースレターに秘密があるのですが、自主現場見学会をやるメリットといえば、一定数のランクアップ客が黙っていても現れることです。
もちろん個人差はあるでしょうが、ニュースレターが上手く機能してくると、高い確率で読者から具体的な家づくりの相談を受けるようになります。
しかもニュースレターでランクアップした顧客は、いわゆる「濃いお客様」として育ちます。
つまり「競合のいない折衝客」ということです。
それは、あなたがよほど間違った折衝をしなければ、ほとんどストレスもなく受注できる顧客です。
逆に注意すべきは多くの管理客が再来場してくれますので、スタッフが少ないと、どうしても顧客の取りこぼしが発生することです。
この点は先ほども書いたとおり事務スタッフでも良いので、できれば心を許せるフォロー要員を現場に配置しておきましょう。
また「濃いお客様」ではありますが、受注はまだ確定していません。
この先の受注営業に細心の注意を払い、折衝を進めましょう。
なお自主現場見学会も一種の「応援消費」と言えます。
そのことに気付いたら、これからは顧客から慕われる営業を目指してほしいと心から願っています 。