専門コラム 第246話 何かを狙って書くレターほど野暮なものはない
このところ「手紙や文章の本質とは何ぞや」など、お堅いコラムが多くて、皆さまにはご迷惑をかけています。
そこでこれを挽回すべく、きょうは自身のニュースレターに対する向かい方について書いてみようと考えました。というのも「いろんなことを言っているけれど、アンタのレターの書き方ってどうなのよ?」という方もいると思ったからです。
ただ何分にも、ニュースレターについて、書き方を教えるつもりで、これまでレターを書いた経験がありません。そんなわけで「こんな具合で書いていた」というだけの、薄い内容になるかもしれないことを、最初にお断りしておきます。
また考えてみると、長くレターについて書いているワリに、
自分のレターの書き方を客観的に見つめ直したことがないと思いました。 これを機に、自分を見つめ直すいい機会になれば嬉しい気持ちです。
何かを狙って書くレターほど野暮なものはない
1 ニュースレターには自虐ネタの類は一切れない
自身のニュースレターに対する向かい方とは、いたって単純です。
これまでも書いたように「素の自分」を、どれだけ表出できるか、考えていたということになります。
ただ思い出してみると、人にはそのようにアドバイスしていますが、先回の記事ではありませんが、何も考えずただ無心になって書いていたというのが実情に近いかもしれません。
少なくともこれだけは言えるでしょう。
自分はニュースレターの冒頭の書き出し部分にしても、編集後記にしても、何かを狙って書いたことはただの一度もないのです。強いてアドバイスするとしら、それらの箇所になるべく「素の自分を出す」ということ。でも自分では、そういう努力をそれほどしていないということです。
ですから、筆者が例えで挙げている不動産営業のメルマガにもあるような、自虐ネタらしきものを入れません。またお笑いを誘うような文言も、ニュースレターには一切入れないようにしています。
筆者は小学校時代、クラスで行うクリスマス会に、当時としてはまだめずらしく、漫才のネタを友だちと披露するほど根っからのお笑い好きです。でもニュースレターや本コラムにお笑いの要素は全く入れていません。
ただ皆さんに、何の面白味もない筆者のスタイルを薦めることはありません(これまでもなかったと思います)。それは自分のレターは、自分の営業観に基づいた、良くも悪くも唯一無二のものだと思うからです。
ただ自分のレターは、ある種の人にはちっとも響かない内容でしょう。しかし別のある種の人にとっては、とても興味深く読んでいただける内容になっていると思います(経験から)。
いまはプロの作家が書いた文章も、文章に触れた回数が圧倒的に低い(と思われる)素人の読者にさえ、平気で酷評される世の中です。それなら自分の信じる文章を、自分の本当の読者に向けて真剣に書こう。半ばその様に言い聞かせて、筆者は文章を書いています。
ただ人にアドバイスする際は、筆者の思いを押し付けるのではなく、他の書き手が薦める方法を「こう言うのがあるよ」と、なるべく伝授していると言うことです。
そう意味で不動産営業のメルマガの主は、私が知る限り、現在も現役でニュースレターを出し続ける筋金入りの営業マンです。そして彼が発信する自虐ネタらしきものを盛り込んだ方法は、信頼できる書き方と言えるでしょう。 ただ今日のコラムは「アンタのレターの書き方ってどうなのよ?」を明かす回です。
その文脈で行くと、自分のニュースレターには自虐ネタの類は一切れないというのが筆者の主義です。
2 ニュースレターで外せない読者の教育
次に来るのはやはり読者の教育です。
筆者は住宅を建てようと考えている方は、皆さんが想像しているより、コアな情報を求めていらっしゃると考えます。そのため、営業マンはそれに対応できるだけの情報を集める、また自分の意見を言えるようにしておくことが欠かせないと信じています。
そういう営業だから「この人に意見を聞いてみたい」、「相談したい」というお客さまが一定数表れてきます。またそういった濃いお客さまと交流することこそ、ニュースレターを使う醍醐味です。
そこには信頼や絆というものも付いてきます。
こうなると、もう競合のことや価格のことは二の次になります。
その境地が、最近では『期待値が満足度を超えるとき顧客はファン客に変わる(2023.1.3投稿済)』記した、ザッポスの元 CEO、トニー・シェイです。
筆者が現役の頃、頻繁にテーマにしたのは、住まいのインテリアのことです。
いまから思えば、内容が読者のレベルを超えて、意味不明のニュースレターになったと反省することも多いのですが、書いている本人は「このことを、ぜひ読者に伝えたい」という思いだけが先に立ち、自分勝手なニュースレターだったと思います。 またこんなレターですから、読者にしてみたら「毎月変なものが送られてくる」と感じられた方もいたと思います。
ただ、本文は専門的過ぎてほとんどついていけないが、それに比べると冒頭の挨拶文は、営業マンの日常などが書いてある不思議なレターだと。その妙なギャップに惹かれ、読む方もいたのだろうと、感じることもあります。
3 何かを狙って書くレターほど野暮なものはない
ただどちらにしても、何かを狙って書くレターほどなもの野暮なものはないと、自身は思っています。
実は先日 Amazon から一冊の古本を手に入れました。
タイトルは『原由美子のおしゃれ上手』という、今となってはかなり古い本です。
この本の中で著者である原さんは言います。
ただ誤解のないようにつけ加えると、この場合着くずすというのは、やたらにボタンをあけたたり襟を立てたり、また突拍子もない色の重ね着をしたりということではなく、ただスーツをあるがままに自然に着ていても、その人らしい雰囲気が出てればいいのだ。
要するに、ただ洋服を着るのでなく、常に自分のほうにひきつけて洋服を着ようという精神を持つことが、くずすおしゃれの根底にある。洋服が主人公でなく、あくまでも着る人が主役でなければならない。
『原由美子のおしゃれ上手』主婦と生活社 1982年 11月1日 より抜粋
当時洋服が好きだったことから、虜となったこの本。
原さんが「着くずす」おしゃれについて語っている箇所です。
そこから言えることは、文章でも何かを狙って書くというのは「やたらにボタンをあけたたり襟を立てたり、また突拍子もない色の重ね着をしたりということ」に等しい。
それより「ただスーツをあるがままに自然に着ていても、その人らしい雰囲気が出てればいいのだ」というのが、筆者なりの美しい文章の定義です——文章のプロでもないのに、偉そうなとこを言ってすみません。
原さんは総理大臣の原敬を祖父とし、スタイリストの草分け的存在。
筆者は、彼女のスタリングや著述を愛好していたファンの一人です。
そして、何かを狙って書くレターを全て否定はしません。
ただ自分では、出来ることなら避けたいと考えています。 皆さまの健闘を、陰なら応戦しています。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。