専門コラム 第83話 住宅はどうして紹介受注が難しい?
住宅は紹介受注が難しい。
筆者はニュースレターの技術と出会ったことで、注文住宅の受注営業が格段に楽になりました。それでも住宅産業は、紹介受注を得ることがとても難しい分野ではないかと思います。
このコラムでも紹介受注について書くことをあえて避けていましたが、今回は新人営業マンのためにも、このテーマに向き合ってみたいと思います。
住宅はどうして紹介受注が難しい?
紹介受注が難しいのはなぜ? それは住宅がクレームを招きやすい商品だから
なぜ住宅は紹介受注が難しいのでしょう。それは住宅がクレームを招きやすい商品だからです。
筆者も元は住宅営業でしたが、この業界に入ってまず驚いたのは、自らの業界を「クレーム産業」と呼ぶことです。
とくに注文住宅はお客様と出会い、物件を引き渡すまでの期間が、他の買い物とは比較にならないほど長くなります。
その過程で起こる「言った言わない」の問題、加えて現場での発注ミス、さらに予測もしてなかったトラブルが次々に発生します。
筆者も初受注物件を引渡したとき、なぜ自分たちの業界を「クレーム産業」と呼ぶのか身を以て理解できました。
と同時に「これは余程気を引き締めてかからないとダメだ」ということにも気づきました。
確かにその分、他の仕事をしているより、色んな意味で強くはなるのですが…。
そして、さらに厄介なことに、この業界では自分の業界を「クレーム産業」と呼ぶわりに、なぜか「紹介」という営業方法を使いたがるのです。
筆者も上司から「紹介はお願いしなければ上がってこない。だからOB客に紹介をお願いしなさい」と発破をかけられた経験があります。
これは他業界を知る者にとって、とても理解し難いことです。
筆者も上司から、こう叱責される度に「そもそも紹介をしたくなる土壌を作る方が先だろう?」と、心の中で怒っていました。
色々な意見はありますが、筆者はこのような環境にいたこともあり、受注応援してくれるお客様については、その行為を一種の紹介と見なすようにしています。
受注応援とは筆者が推奨しているOB客訪問のこと。そして、OB客訪問とは、折衝中のお客様をOB客の建てた住まいに案内することです。
これならOB客とOB客訪問に参加されたお客様には、基本的に何の繋がりもできないので、万が一クレームが起きた場合でも、OB客に変な迷惑が及ぶことはありません。
OB客も知人の誰かを紹介してあげたいと考えてはいても、心どこかでクレームを心配しています。
それなら懇意にしている営業マンの折衝客を自宅に招き、受注応援に徹する方が安心だと考えます。
お客様はモノではなく会社の考え方に共鳴してサイフの紐を緩めている
話は変わりますが、スティーブ・ジョブズがいた頃のアップル製品はよく売れました。
理由は簡単です。
古くからのアップルファンが欲しいのは、モノではなく、ジョブズの生き方、考え方にあるからです。
いくら競合が製品の表面だけをそっくり真似ても太刀打ちできません。
どれだけ正確に“おもてづら”を真似たところで、本家本元のようには売れないのです。
住宅の紹介案件もこれに似ているところがあります。
つまり家の紹介を下さったOB客は、家というより、むしろ会社や営業の考え方を評価しているということです。
つまり、自分の内側にある生き方、考え方を上手に示してあげること、これが売れることにつながっていくのです。
キレイごとに聞こえるかも知れません。
しかしこれが最新のマーケティング法なのです。
筆者は地場の工務店で営業していたことがあります。
この会社の金額は安価な仕様でも坪 60 万は下りません。
性能やデザインはすべて、ハウスメーカーを凌ぐ一級の家です。
はっきりとした数字はとっていませんが、少なくとも四割近くが紹介や応援受注だったと記憶します。
商品が住宅でしたから、営業マン個人の生き方・考え方も然る事ながら、さらには建設に関わるチーム全体が醸し出すライフスタイルや強烈な感性に、多くのお施主様が共感し、紹介受注や応援受注につながっていたのだと認識しております。
「応援消費」こそ紹介受注につながるテーマ
これと似た現象に応援消費があります。
これは、東日本大震災の災害支援活動を契機に注目され始めたワードです。
この「応援消費」は、もともと様々な消費活動を内包します。
たとえば「ふるさと納税」や、今回のコロナ禍で話題となった「生産者応援プロジェクト![1]」なども「応援消費」に含まれます。
ただマーケティング的に捉えると「応援消費」は、先般の続きではありませんが、会社や社員の生き方・考え方、或いは提案するライフスタイルそのものに共感し、企業や営業マンを応援する概念でもあります。
そして何と言っても「応援消費」こそ、住宅会社の紹介受注につながる大事なテーマということが筆者の見立てです。
ここから新人営業が学べることがあるとすれば、何より「顧客が応援したくなる営業マン」を目指すことでしょう。
そして自分の内側にある生き方、考え方を強く主張するのではなく、静かに滲ませるということ。
これが大事ではないでしょうか。
見込み客を自分のファンにしてしまうということは、そう言うことです。
もちろんニュースレターは、あなたの普段の姿を的確に伝えるツールとして活躍するはずです。
[1] 日テレ系テレビ番組『満天☆青空レストラン』がコロナ禍で企画した、食材の生産者を応援するプロジェクトのこと。他にも似た企画として「食べチョク」の「食べて応援プロジェクト」などがある。