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専門コラム 第87話 話題の「施主支給」_! 営業ならどう対処すべき

 

私たちの携わる住宅業界では「施主支給」という工事に関する業界用語があります。

 

「施主支給」と検索すれば言葉に意味はすぐ分かりますが、簡単に言うと住宅工事等で、施主(建主)が自分で購入した設備や部材を現場に取り付けることを指します。

 

「施主支給」で最も多いのは多分エアコンの設置だと思いますが、この他にもキッチンやトイレといった住宅設備、また照明器具やクロスなどインテリア部材も「施主支給」の中に含まれます。

 

「施主支給」は以前から行われていました。

しかし近年では、ネット通販やECサイトなどで住設や建築部材などが手軽に揃うことから、一部のユーザーの間では一段と「施主支給」が注目されているようです。

 

ただ正規の手順で「施主支給」をするとなると、いろいろ厄介なことが分かってきます。

ここでは住宅営業マンとして、お客様から「施主支給」を希望されたら、どのように対処すれば良いかをまとめてみましょう。

 

話題の「施主支給」! 営業ならどう対処すべき

施主支給は保証の対象から外れてしまう

 

結論から先に言いますと、住宅営業マンとして施主支給は、積極的にお受けできない事情があります。

また施工店側も施主支給を受けていないか、受けてもらえる場合でも、設備や建材によって限られるケースが今では多くなっています。

 

稀にご自分が現場に詳しく、施工店側も快く受けてもらえるケースもあるでしょう。

ただ現場のことがよく分かっている方ほど、施主支給を希望する方は、逆に少ないのではというのが実感です。

誤解を恐れず言うと、現場のことが分かっていない方に限って「施主支給をしたがる」方が多いと言うことです。

 

理由はいろいろありますが、代表的な例で言うと施主支給は、設備自体はもちろんのこと、たとえばモノがキッチンなら配管に関しても、保証の対象から外れてしまうからです。

(配管に関しては「工事区分」にもよる。)

 

施主支給を考えている方は、設備自体に施工店の利益が乗らないから「コストダウンにつながる」と考えているかもしません。

しかし先のキッチンの配管の不具合で漏水トラブルが発生し、フロアを腐らせるようなことが起きても、苦情を施工店に言えなくなります。

つまり配管はもちろんですが、フロアの張り替えも全て有料になる可能性があるのです。

 

たしかに設備は原価に近い値段で安く買えるかもしれません。

ただし施主支給の場合は保証の対象外となりますので。

こうなれば話は違って来るはず。

 

営業であれば、まずこのことをお客様に伝えなれければいけません。

 

  

本来は現場の搬入も施主がやらなければいけない!

もうひとつ施主支給を勧められない代表的な理由をあげましょう。

それは製品の荷受けに関することです。

 

施主支給になると、現場の搬入は基本的に施主がやらなくてはいけません。

そして細かいようですが、現場の所定の位置まで運ばなければいけないことになっています。

 

キッチンを例にした場合、システムキッチンは相当な箱数で現場に届きます。

これを素人が荷受けして所定の位置まで運ぶことになりますから、何も聞かされていなければ現場は相当混乱するはず。

 

ドライバーの方が手伝ってくることもあるでしょう。

しかしドライバーは、運転はプロでも現場については素人です。

もちろん前もって、担当大工や電気工事の職人にお願いすることもできるでしょうが、その場合は職人の仕事を止めてしまうことになります。

そうなれば職人から追加金額を請求される可能性もあります。もちろんその費用は、お客様が負担しなければいけません。

 

さらに予定した日時に荷物が届かないと、それに合わせて予定していた工事もストップしてしまいます。

実はこうしたスケージュール調整も、施主支給の場合は建主に任せられます。

 

もちろんこれは「いじめ」ではありません。

現場の基本的なルールです。

こうしたことを最初ら分かっていても、それでもなお施主支給を希望するでしょうか?

 

多くの住宅会社では施主支給を認めるケースでも、工事後にエアコンを取り付けたり、タオル掛け、物干し、照明器具など、備品に限定することが多いのはこのためです。

 

仕組みも理解していないお客様に施主支給を勧めるのは間違いのもと

 

もっと細かく言うと、施主は支給品の図面を現場に手配したりもしますし、必要な場合は配管位置を指定しなければなりません。

施主の普段のお仕事が建築業ということならまだしも、別の仕事を持っている方が大半のはずです。

 

ここまでやっても採用したい「特殊なこだわり」があり、主支給本来の手間をいとわなければ、施工店側に施主支給のことを相談しても良いでしょう。

 

ただ仕組みも知らないのに「ただなんとなくコストダウンできるから」と言うだけで、支給品を現場に使うことをお客様に勧めるべきではありません。

 

また、どうしても取り付けたい器具や設備があるなら、施工会社のインテリア担当に聞いてみたら良いでしょう。

施主が購入できると言うことは、会社でも同様に手配できるはすです。何も施工店側は、標準設定品を採用してもらうことに躍起になってはいません。

 

「現場は儲けすぎてる」と思うかもしれませんが、実はそんなこともありません。

それより採用した設備や備品が適切な保証を得られた方が、精神的にもどんなに健全なことか分かりません。

自分に施主支給が合っているかどうか、もう一度よく考えていただきたいものです。