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専門コラム 第281話 基本というものの大切さについて

    

次は何を書こうか、考えあぐねていました。

実は営業レター(ニュースレター)について、まだ書きたいことはありました。
しかしここのところ、営業レターを題材にしたコラムが続いていたので、読んでくれている皆さんも、そして筆者自身も、何か息抜きになるテーマが必要ではと考えていたのです。

そんなことを思いながら、自分のYouTubeチャンネルをスクロールしていたとき、『【ギター初心者が最短で上手くなる練習】/【ギター中・上級者が必ずやっている練習】』という動画[1]を開いてみていたのです。

もちろん動画を開いた理由は、たんなるヒマつぶし。

でも出だしの文句を聞いてみると、昔ギターを弾いていた人間にはちょっと刺さるものがありました。またこの動画の主が、ギブソンではなくエピフォン E360TD(「リビエラ」)を使っていたことにも好感を持てました。 そこからヒントを得て、この記事を書いています。
仮タイトルは「基本というものの大切さについて」です。


[1] 【ギター初心者が最短で上手くなる練習】/【ギター中・上級者が必ずやっている練習】(https://www.youtube.com/watch?v=WsRuHnDFE2M&list=LL&index=3&t=1634s)]

  

基本というものの大切さについて

1 ギター中・上級者が必ずやっている練習法とは?

 

動画の内容ですが、「ギター初心者が最短で上手くなる練習(方法)」、そして「ギター中・上級者が必ずやっている練習とは何か」と問うものです。

ロックでもジャスでも、コンテンポラリー・ギターを齧った方は分かると思いますが、答えを言うと、何ということもない「基本練習」です。
(これを「スケール練習」「音階練習」とも言います)。

基本ですから見ている分には全くつまらない動画です。
筆者も「スケール練習」の部分は既に知っていますから、見ないで飛ばしています。

(なお、「スケール練習」をより音楽的、且つユニークにやる先生に、バークリー音楽スクールのトモ藤田氏がいます。興味がある方は[トモ藤田 基本練習]、ないしは[トモ藤田 運指練習]と入力し、検索してみると良いでしょう)

でも動画映えは全然しなくても、ギタリスト本人にとって基礎練習はとても大切です。
なぜって、ギタリストである以上、楽器をマスター(それは「上達すること」と言っても良い)することは、自分の一生を捧げて行うことだからです。

大袈裟に思うかもしれませんが、これは本当のことです。

だからこの先生が言うように、ギターが上手な人ほど、基礎練習を丁寧に時間をかけて行います。

たとえば 80 年代初頭、活動を再開したマイルスのバンドのギターを任されたマイク・スターン。
彼などはこうしたエチュードを弾くのが病的に好きなミュージシャンです。おそらく現在も「基本練習」の新しい譜面を取り寄せていると思います。
なぜそこまでして、新しい課題に取り組むのでしょうか? それは、繰り返しますが、ギターをもっと上手く弾きたいからです。 ギタリスト(またはすべての楽器奏者)にとって、「基本練習」というのは、ある意味やって当たり前のこと。
やらない方はギターの上達を放棄した人か、練習しなくても天才的に弾ける方。
さもなくば、音楽の目的がプレイのことより、もっと他のこと——たとえばお金や名声——にある人ではないでしょうか。

    

2 ロープレと同行は営業の貴重な「基本練習」タイム!

 

では営業にも、楽器のような「基本練習」が存在するでしょうか?

答えは yes です。

営業にとっては「基本練習」と言って過言ではないもの。
それは営業マンの同行です。

ただ状況によっては、同行をしたくても、やれない環境の方もいると思います。
どういうことかと言うと、自身も同行訪問を付けてもらった経験があり、且つ、営業キャリアが長く、それなりの実績を積んだリーダー社員の存在です。

残念ながら同行とは、このような方が居て初めて成立します。

ハウスメーカーは、営業社員が多いことから教育制度が整っています。
また支店には、リーダーにふさわしい人材を計画的に配置しています。つまり、おのずと同行といった、営業指導を付けられる人員が揃っています。

この点で、筆者の営業キャリアはとても恵まれた環境でスタートしていました。
言い換えれば、同行を行うことで苦労したことはありません——但し、本人の営業力が足らなくて、苦労したことは山ほどあります……。

そういう面でいうと、営業人材の薄い地場工務店は大手メーカーと比較した場合、営業的に不利な点は否めません。
仮に地場工務店で、営業を見てあげられるリーダー不在の場合は、自分たちで相互に営業力を育てる工夫が必要です。

そして経験から言えることは、本当に実力のある営業ほど、お客さまの当たりは実にソフトで柔らかです。また説明は非常に丁寧で、話すスピードもゆっくりとしています(但しリズムはあります)。聞いていて心地いい。
考えてみれば、我々の仕事は BtoC営業です。法人営業にはない洗練された面があって当然です。
筆者もそれに気付いてから、柔和な人当たりを意識して心掛けています。

なお、営業同行をイヤがる人は多いようです。先輩もいつまでも、他人の仕事に付き合ってはくれません。経験がまだ浅い時代、貴重な「基本練習」タイムを大事にしたいものです。

   

3 技術って思っているよりずっと大事

 

「基本練習」の最後に、文章を書く力について、小説家の村上春樹氏がこんな言葉を残しています。

 

文章の書き方を練習するのがいちばんです。
(中略)虚しさみたいなこともやがて感じなくなります。
技術を馬鹿にする人がときどきいますが、そんなことありません。技術って思っているよりずっと大事ですよ。そして技術とは練習です。とにかく練習してください。

(文章はとにかく練習です|期間限定サイト『村上さんのところ』より)

 

これは数年前に、村上春樹さんが読者とメールで大量の交信を残された時がありました。
そしてその大半は、たしか本としても[1]残っているはずです。
(筆者はその幾つかの気になるやりとりを、文書に残しています)

上記の言葉は、

 

村上さんは、物語を書いてる途中でふと、こんなこと、なんの意味があるのだろう、と思うことはありますか? 僕は自分で物語を書こうとすると、途中ですごく虚しくなってしまいます(後略)。

(文章はとにかく練習です|期間限定サイト『村上さんのところ』より)

 

と、ある男性の問い掛けから出てきたフレーズの一節です。

他には

 

私はいちおう文章を書く仕事をしていますが、仕事がいやだなあといつも思ってしまいます(後略)。

(「文章を書く仕事」がイヤです|期間限定サイト『村上さんのところ』より)

 

とあります。こちらは女性のようです。

同じように村上氏はメールでこのように答えています。

 

せっかく文章を書く仕事で生活しているのに、文章を書くのがいやなんだ。それはもったいないですね(後略)。

 

そして、

 

僕の経験からいえば、文章がうまく書けるようになれば、仕事をするのがずっと楽しくなります。


(前略)とても単純な回答になりますが、努力してもっとうまくなれば? 気楽すぎる意見でしょうか? まあ、僕も(ある程度)うまくなるのに時間はかかりましたが、人生最後まで勉強ですから、しっかりがんばらなくては。

(「文章を書く仕事」がイヤです|期間限定サイト『村上さんのところ』より)

  
ここに共通していること。
それは

 

どんな仕事であれ、うまくできる余地のあるものは、できるだけうまくやった方がいい”ということ。

(「文章を書く仕事」がイヤです|期間限定サイト『村上さんのところ』より)

 

どれも「基本練習」の最後を飾るのに、珠玉の言葉と言えるものばかり。
皆さんのこころには、どのように響きましたでしょう。 皆さま、それでは!


[1] 本というのは、村上春樹氏著『村上さんのところ』新潮社 (2015/7/24)のこと

  

  

  

   

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。

また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。