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専門コラム 第49話 営業は「売り込まない」ことがどうして重要なの?

このコラムでも何度となく触れてきた、営業は「売り込まない」というもの。

しかしこの動かせない真実を幾ら告げても、古い風習から抜け出すのは容易ではありません。

またそのことで、多くの方が営業の現場から去っていったことを、身をもって知っています。

 

しかし営業は「売り始めた時」が、イコール「負け」です。

 

今回のコラムでは「売り込まない」ことで「再び記事をあげないで済むよう(?)」、脳の基本性能「オートクライン」と「本当の売り方」について解説します。

 

営業は「売り込まない」ことがどうして重要なの?

どうして人は説得されることを嫌うのか?

「オートクライン」とは、元々医学用語の「Autocrine(自己分泌)」を由来とする言葉。

近年ではコーチングの分野で多く扱われています。

 

「オートクライン」の説明に前に、ひとつ確認したいがことがあります。

それは私たち人間が持つ「他人から説得されることを嫌う」という特性です。

このことは以前にも「特に社長や経営者の方で、最近ひとに説得されて物品の購入を決断した方は恐らくいないはず」などと、本コラムの中でも触れています。

 

そして「オートクライン」とは何かということですが、簡単に言うと「人間は人の話を聞いたり、頭の中で考えているだけでは、なかなか理解には至らない」ということ。

これを言い換えると、私たちは自分で口にした言葉や紙に書いた文字を読むことで、初めてその意味を理解します。

 

よく成功法則などで「なりたい自分を文字に書き著し、書いたものを言葉にして読み返すと良い(イメージとして定着しやすい)」と言います。

まさにこれなど、脳の基本性能が「オートクライン」で統制されていることを示す好例です。

 

このことは「どうして人は説得されることを嫌うのか」の答えを導きます。

つまり私たち人間は、多少の例外(好みの異性に売り込まれたなど)こそあれ、頭の中にある情報を言葉に置き換えて、自分の耳で聞いたものでなければ、正しく認識できない動物なのです。

 

以上を整理すると、「オートクライン」で統制されている私たちは、人からの説得はほとんど無駄に終わり、自分の口で発した言葉でなければ、容易に理解には至りません。

 

営業は「説得」より「相手に話させる」ことが重要などと言われます。

これはあながち嘘などではなく、まさに「正解」です。

これで「なぜ営業が売り込んではいけない」また「どうして営業に成功しないか」のワケが、脳の基本性能からも理解できたことでしょう。

 

営業は説得ではなく的確な質問力を鍛えるべき

では、次はどうすれば心の中の抽象的な思いを顧客に話させるかです。

 

これは営業のあなたなら、もう分かりますね。

 

営業は、答えを引き出すような「質問」を用意します。

つまり打ち合わせ中の営業は、質問力こそ商談を制するカギになります。

 

なお住宅の場合、商談中は言葉少なめでも、自宅にプランを持ち帰って再検討する際、顧客はたくさんのキーワードを発言します。

 

例をあげると

「ここに洗面室があるから、水回りの導線がスムーズなんだ!」

「外部に出られる勝手口に、テラスコンクリートは標準で付くんだっけ?」

「この家は、PS社のパネルヒーターが配置してある高断熱型の住宅で間違いないよね」

など。

 

このようなワードを発せられたら、この方はもう少しで契約できるお客様です。

そこで営業は透かさず、プラン内容のフォローを実施します。

 

質問力と同じぐらい大事な「沈黙」とは?

また営業で大事なのは「質問」だけでしょうか?

 

商談の成功率を高めるため、もう一つ重要なことがあります。

それは「沈黙」(商談中に黙ること)です。

 

商談の中で「沈黙」するコツは、「質問」によって顧客が重要な決断を語り出した場合など、決して話の腰をおらず、ひたすら黙って顧客の話を聞くことです。

そうして顧客に考える余裕を与えれば、顧客は営業に「言いくるめられた感」を抱きません。

 

また「沈黙」は、打ち合わせ中、答えを得たい場合に効果を発揮します。

そのため「沈黙」は、クロージングの場面で多用されます。

 

繰り返しますが、営業の正しい売り方は「説得」することではありません。

「質問」そして「沈黙」です。

なお営業に不慣れな新人には、的確な「質問」を繰り出すことはやや高度な技術です。

そのため初めはとにかくインタビュワーになり切って、聞き役に徹してみましょう。

そうすることで「質問」するタイミングや何を話せば良いかが徐々に分かってくるでしょう 。