専門コラム 第9話 契約編 仮契約
仮契約
注文住宅では提案プランや概算見積もりに合意できると、契約を前提とした実施設計に移行します。
これを住宅業界では一般的に仮契約とよんでいます。
仮契約によって担当スタッフも、工事、設計のほか、インテリアコーディネーター、営業事務と増えますので、案件の周辺は急に活気づき、営業としては少しばかり誇らしい気分に浸れる瞬間でしょう。
ここでは仮契約や仮契約以降で、社内でおもに何が行われるのかまとめてみましょう。
仮契約で急がれる図面の確定と仕様打ち合わせ
仮契約(設計依頼)とは?
住宅会社の仮契約は設計業務委託契約を結ぶケースもあるなど、会社により対応の面で若干の違いがあります。
ただ一般的な注文住宅の会社は、設計・工事を同時に行い、最終的に工事請負契約を締結し、お客様の住宅を完成させることが本来の仕事です。
そのため仮契約で行われることは、工事請負契約に必要な設計図書類を揃えることに集約されます。
また社内の各スタッフも「〇〇様邸建築工事」計画について一斉に動き出しますし、担当大工の選択・スケジュール確保も始まります。
特にここまでほとんど孤軍奮闘で頑張った営業は、自分でとった仕事が社内で共有されますから、仮契約でやっと一息つけます、
なお仮契約時では、ひとつの区切りとしてお客様から工事費の一部をお支払いただきますが、その額は概ね100万円など、区切りの良い額で決めているようです。
その際、お客様には会社(支店)にお持ちいただくか、口座にお金を振り込んで貰います。
新人営業の方にとって、会社の口座情報はこれから頻繁に使うため、忘れずメモしておくと良いでしょう。
最終図面(プラン)の確定と仕様打ち合わせ
仮契約以降も図面が未確定の場合は、引き続きプランの打ち合わせが進められます。
これと同時に、ショールーム等を使って仕様の打ち合わせも行われます。
なお、最近の注文住宅は仕様の選択を簡素化し、選びやすくする方向に向かっていますが、これに賛同する方は多いのではないでしょうか。
なぜなら他に仕事を持つ一般の方が、住宅の打ち合わせに時間を割けるのは、仮契約前後のプラン打ち合わせまでが限界だろうと思うからです。
以前の注文住宅は自由設計をセールスポイントにしていましたが、行きすぎた自由設計志向は過剰提案が危惧されるからです。
また工事が始まってからの現場トラブルが発生するのは、結局は仕様の未決が多いことが関係しています。
これからお客様に選ばれるのは、標準仕様で十分納得度合いの高い(感度と価格のバランスが絶妙な)会社であり、別の言い方をすれば、施主負担を軽減する単純化した仕様でしょう。
話が横道に逸れましたが、ぜひ検討していただきたいテーマです。
なお着工予定時期にもよりますが、最終図面(プラン)の確定は急ぎたいところです。
また仕様について全確定は無理でも、カラーの選択を残すぐらいまで詰めておくことが理想的です。
詳細図面の作成
基本プランが確定したら設計スタッフによって詳細図面の作成(実施設計)に進みます。
基本プランと詳細図面の作成(実施設計)の違いは、基本プランはお客様のプレゼンのための図面でしたが、詳細図面の作成では施工業者や設備業者などが見る、施工のための図面と言えばわかりやすでしょう。
詳細図面の種類は
- 配置図
- 平面(詳細)図
- 立面図
- 矩計図
- 構造図(基礎伏図・床伏図・小屋伏図)
などです。
工事請負契約に添付する詳細図面は、配置図、平面(詳細)図、立面図と仕上げ表、そして詳細見積もり(工事費内訳明細書)です。
またこの時期に忘れてはいけないのは、住宅ローンの仮審査を出して、金融機関から融資の内諾を得ておくことです。
仮契約以降は着工に向けて更に忙しくなります。お客様には体調管理に気を付けるよう、呼び掛けることも必要です。