専門コラム 第24話 自分だけの成功パターンを手に入れ、常に前向きな気持ちでビジネスをする。
人生は判断の連続
株の世界にはさまざまな格言があります。
もちろん、いつの場合でもすべてが格言通りになるはずがありません。
結果として当たったときに、「やはり格言は正しい」と思い込むだけでしょう。
また、迷いを誘ったり迷いを表したりしている格言もあります。
押し目待ちの押し目なし
もうはまだなり、まだはもうなり
前者の「押し目」というのは、値上がりしている株価が一時的に下がるときを指し、当然、このときに買えば利益が大きくなりますから、だれもがそのタイミングを見極めようとします。
しかし、そんなときに限って、一本調子で上がり続け、買うタイミングを逃してしまうことがあるということを意味しています。
後者については説明する必要もないでしょう。もう下げ止まるだろうと思ってもまだ下がり続けるのが株価です。株価はいろんな要素やさまざまな人の思惑で動くものですから、動きを読み切ったうえでの適切な判断などは、だれにでもできることではないでしょう。
判断の難しさは株だけではありません。
将棋も囲碁も、1つの悪手で形勢が一気に逆転します。
無数にある次の1手のうち何をとるか。
棋士は盤に向かっては頭脳をフル回転させて最善手を見つけ出そうと苦悩します。
それでも、悪手あるいは緩手を指してしまうものなのです。
残り時間が無くなってくるとなおさらです。
これほど1手に重みのあるゲームもないと思っています。
ラグビーを考えてみましょう。
スクラムから出たボールをどんな攻めにつなげるか。
サイドアタックなのか、バックスに回すのか、それともパント攻撃なのか。
それにも一瞬の判断が求められます。
判断を誤れば大きなチャンスを失うことにつながりかねません。
もっと大きな世界でみてみましょう。
中国の秦帝国が滅亡した後、覇を競った項羽と劉邦の戦いは楚漢戦争と呼ばれ、さまざまな小説や演劇の題材となっています。
最終的に、農民出身の劉邦が、楚国の大将軍の孫である項羽を破って漢帝国を樹立します。
死を間際にして「70回戦って敗れたことはない」と語ったように、項羽の勇猛さと彼が率いた楚軍の強さは当代一で、何度か劉邦を敗死させる機会があったにもかかわらず、結局は敗れてしまいます。
強さに依存しすぎて諸侯や民の心を引き付けることに全く無頓着だった項羽の性格や生き方に加え、参謀の助言を退けるという痛恨の判断ミスが敗北を招きました。
楚漢戦争の流れをたどってみると、状況は刻一刻と変化しており、状況に応じた判断の難しさを痛感します。
結局、適切な判断を損なうのは欲と慢心、それに、自分の考えに固執して周囲の声に耳を貸さないといったこだわりと、大局観に欠けるためではないでしょうか。
人を引き付けられる力が成否を分ける
では、日常のビジネスにおいて判断ミスをなくして成功するには何が必要なのでしょうか。多くの経営者や研究者が、自己の体験や調査研究の中で、多くの名言を残しています。
ベストを尽くさなければ、それは失敗とは言えない。まだやる価値がある。ベストを尽くさない限り成功はない。そしてベストを尽くしている限り、失敗もない。すべてが成功につながる。
こう言ったのは、アップルのスティーブ・ジョブズです。
「発明王」と呼ばれたトーマス・エジソンも似たような言葉を残しています。
失敗する者の多くは、あきらめてしまうときに、自分がいかに成功に近づいているかに気付いていない。
鉄鋼会社を創設して成功し、「鋼鉄王」と呼ばれたアメリカの実業家、アンドリュー・カーネギーは次のように言いました。
他人と最もうまく協力できる人が、最大の成功を収めることができる。
また、「自動車王」、ヘンリー・フォードにはこんな言葉があります。
成功の秘訣があるとすれば、他人の立ち場から物事を見ることのできる能力である。
いずれの言葉も納得できるでしょう。
ただ、前の2つは、実行したり身に着けたりするのが難しい、たゆまぬ努力と失敗にもめげない強い精神力が求められるのに対し、あとの2つは性格や日常生活につながる要素が大きいだけに、これなら自分でもできるのではと思わせてくれます。
加えて、他人の視点を取り込むことで、誤った判断を下す恐れも小さくなるのではないでしょうか。
項羽にしても、その姿勢を持っていれば、天下を収められたっでしょう。
人を相手にするビジネスにおいてはなおさらです。
強みを生かして成功パターンを手にしよう
人が臆病になるのは、失敗を恐れるからです。
硬直化した減点主義の評価がそれに拍車をかけます。
エジソンにはこんな言葉もあります。
私は失敗したことがない。
ただ、1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ。
開き直りのようにも聞こえますが、こう言えるほど努力が続けられ、図太くなれればうらやましくもあります。
ただ、エジソンにはなれなくても、失敗しても気持ちを切り替えて再度チャレンジすることは誰にでもできるはずです。
そして、自分なりの成功パターンを早く見つけ出すことです。
そこで参考になるのが、マイクロソフトの共同創始者、ビル・ゲイツのこんな言葉です。
成功のカギは的を見失わないことだ。
自分が最も力を発揮できる範囲を見極め、そこに時間とエネルギーを集中することである。
製品やサービスを売り込む際には、他者のものにはない強みを最大にアピールするはずです。
自分についても同じことをすればいいのです。
あなたの強みはどこにあるのでしょうか。
商品知識? トーク力? 笑顔と人当たり? 誠実さ?……
最初は、自分に似ている人の真似をするのでもいいでしょう。
しかし、同じ人間はいないのですから、やがて頭打ちになったり自分で納得できなくなったりするでしょう。
そのときが自分流にアレンジするチャンスです。
あるいはまったく新しい自分だけの手法を創り出せるかもしれません。
失敗するのではと悲観的にならないためにも、失敗を恐れずにチャレンジを続けて、自分だけの成功パターンを手に入れ、常に前向きな気持ちでビジネスをしたくありませんか?
ただ、自分なりの成功パターンを作り上げたとしても、それで満足してはいられません。マネジメントの大家、ピーター・ドラッカーのこんな言葉を最後に紹介しておきましょう。
成功は常に、その成功をもたらした行動を陳腐化し、新しい現実を創り出す。新しい問題を創り出す。