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専門コラム 第276話 営業マンが理にかなったプランが書けるようになると起こること

    

住宅会社によって、営業がこなす仕事は変わって来ます。

ただそれを二分した場合、営業マンがプランまで担当するかどうかにあると言っていいでしょう。

そしてこのことは、賛否が分かれるところです。

(一般に地域工務店は、営業がプランまで担当するのが通常のようですが……)

特に設計部門に力がある会社、そもそも営業マンは不要と考えている会社は、彼等営業がプランまで担当することに否定的です。理由は、営業マンはお客さまに、「営業トーク」というウソを平気でつくと思われているから。

また大手ハウスメーカーのほとんどが、営業マンがプランまで担当しなくていいと考えているようです。

なぜって? 
「そんなヒマがあれば、営業はプラン打ち合わせが出来るお客さまを、もっと連れて来てほしい! 後は僕等がしっかり刈り取るから」 ニュアンスはちょっと違うかもしれません。
でも大体こんなことを言っているのではありませんか。

  

営業マンが理にかなったプランが書けるようになると起こること

1 営業マンがプランまで担当するか? それは会社の方針次第

 

筆者の考えはどちらでもありません。

ただ、筆者の立場はあくまで営業です。

営業が不要という会社に「どうしても営業として働きたい」と職を求めることはないでしょう。
また大手メーカーのように、しっかりと仕事の範囲が区分けされているのであれば、その事情に従います。

ただ経験から言うと、もともとこの世界に入った際の正直な感想は——いまでもはっきりと覚えていますが——「なぜ営業がプランまで担当しなければいけないのか!」さっぱり分からないというものでした。

実は——これはコラムでも何度か説明していますが——筆者が住宅業界の入口に選んだところは、営業マンがプランニングまで担当しなければいけない会社でした。

プランニングとはどのぐらいのことを営業がやるか。
たとえば出社前の早朝訓練でのこと。敷地の形状、都市計画で定められた用途地域、建蔽・容積率が毎回異なり、結構クセのあるプラン要望(予算も含む)の課題を取り決め、これを15分から20分ほどで仕上げる(競争する)のです——縮尺は1:100 です。

しかも余裕があれば、立面はもちろん、外構計画も簡単に図面に落とします。

これを筆者以外の営業は、大体このようなことが即座に出来ました。
しかもどれもグッドプラン。

まるで「こんなこと朝飯前」と言わんばかり——まさに実力の差を見せ付けられているようで、プラン訓練の時間が筆者はイヤで堪らなかった。
これで少しは筆者がボヤきたい気持ちが分かってもらえたでしょうか。

ただ精緻な手書き図面が、30 分足らずで営業が書けるのです。
俄然トークのほうも、当然変わっていきます。

どう変わるか? それは営業マン的なトークが自然と淘汰され、住宅のプロらしい言葉が勝ってきます。
つまり全員が「知識の営業」を、自然と実践していたということです。

いろんな意味で、理にかなった建築プラン(しかもグッドプラン)が書けるのです。
それに応じて、言葉も引っ張られるのは当たり前です。

どうして会社は営業に「技術の営業(エンジニア営業)」を勧めたのか。それは営業マンに「知識の営業」を広めるため。いまとなってはそう思います。

事情により、営業マンがプランを出せない会社もあるでしょう。
その場合でも、見込み客が打ち合わせ客にランクアップする。そのタイミングで、プランニングシートに営業なりのラフプランをメモしておく。 それだけでも、何かが変わる。
筆者はそう考えています。

   

2 ブラタモリに見る「間取り打ち合わせの縮図」とは

 

筆者はあまりテレビを見ませんが、それでも毎週欠かさず見ている番組があります。
それは草彅 剛さんがナレーターを務める「ブラタモリ」(NHK 総合)です。

「ブラタモリ」は地形や地質について、異常なまでに詳しいタモリさんが、独自の視点で、日本国内の街並みに潜む歴史の痕跡を次々と発掘する紀行バラエティ。

この番組の見どころは、独自の見識を持つタモリさんが、ナビゲーター役を務めるキュレーター(学芸員)たちを唸らせるところです。

先日の「ブラタモリ〜対馬編」でも、アナウンサーの女性にタモリさんが「ここに船越って看板が出ているけど、船越の意味って何か分かる?」と話し掛けます。
「船越ってのは、こういうリアス海岸が多いところで、たとえば東側の海から西側の海に船荷を受け渡す際に用いられる言葉なの」。

この会話を聞いていたキュレーターは、タモリ氏の慧眼にタジタジとします。
と言うのも、次の話題にしたいことが、まさにこの「船越」という仕組みだったからです。もちろんそのことを、タモリさんは知りません。

筆者は住宅のプラン打ち合わせも、概ねこれでいいんだと思います(と言っても、ずいぶんと高度なやり取りですが……)。

この場合、キュレーターがお客さまを担当する設計士。
そして地形、地質についてかなり詳しく、さらに歴史についてもそれなりの知見を有するタモリ役は、さしずめ営業マンです。

タモリさんのいいところ。それは絶対にキュレーター役の顔を潰しません。
そしてキュレーターが引き出そうとする答えを、いい塩梅で当ててしまう。 このバランス感覚が絶妙(天才的)です。

   

3 その場でプランが書ける技術は誰も盗みようのない知の資産

 

ただこのバランスを保つのに、どうしても必要なのが営業のプラン力です。

ですから、人知れず自分だけのために、ラフプランをメモっておく。

これをやっておくと、プランのアイデアが息詰まった時(また尽きた時)、自分のプランが採用される場合があります。
実は筆者のプランナーとしてデビューは、こうしたことがきっかけで生まれています。

プラン力を鍛えるのに必要なもの。それは最初のうちは数多くプランと完成物件を見比べて、良いプランのパターンを体に仕込ませることです。
そしてプランを書く力、特にプランを客前で淀みなくスラスラと書けてしまうと、もう誰も盗みようのない永遠の財産になります。

他には書籍で良いプラン集を見ることです。
彰国社から出ている建築家・吉田桂二氏のシリーズはどの本も参考になります。

また 2007 年 8 月号の「建築知識」では、「吉田桂二の【木造架構 × 間取り】究極ガイド」として特集が組まれています。もしかしたら現在も、バックナンバーとして入手可能かもしれません。

ただ営業は幾らプランが上手く書けても、出しゃばり過ぎは禁物。
下手すると足を掬われます。 会社がプランを書くよう勧めていなければ、営業マンはブラタモリを思い出し、盛り上げ役に徹する。それがいちばんです。

  

  

   

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。

また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。