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専門コラム 第27話 精力をクリエイティブな思考を働かせることに活用して、 より大きな成果を得る。

血の小便の教え

「24時間戦えますか?」というCMがはやったのは30年前のこと。

バブル経済最終盤で、仕事も遊びもバリバリこなす〝企業戦士〟が高く評価されているような時代でした。

その後のバブル崩壊からデフレ経済の長期化の中で、仕事の価値観も随分様変わりし、こうした企業戦士を賛美するような会社でしたら、今なら完全にブラック企業でしょう。

しかし、バリバリ仕事をするのがすべて悪いわけではありません。

起業したてのころは軌道に乗せるため、それこそ死に物狂いで仕事に打ち込まざるを得ないでしょうし、経営が悪化したときもそうでしょう。

新製品や新しい技術の開発に取り掛かったときも、成果が見えるまで休む気にもならないであろうことは理解できます。

問題は、それが強いられてやるのかということと、どちらの方向を向いて取り組むのかということにあります。

やらされる仕事というのは長続きしませんし、給料や待遇などを考え合わせて不平不満が出やすくなります。

また、何のために、だれのためにが明確でないと、意欲もわきません。

逆に、創作意欲をかきたてられたり、その仕事が将来につながっていると感じられたりすると、辛さも軽減され、仕事が苦にならなくなるのが人間心理と言えるのではないでしょうか。

天才なんかあるものか。

僕は他人がコーヒーを飲んでいる時間に仕事をしただけだ。

これは「阿Q正伝」などで知られる中国の思想家で作家の魯迅の言葉です。

魯迅は小説のほか、中国文学の研究書や外国文学の膨大な翻訳を残しました。

この言葉には時間を惜しむ姿勢がうかがえますが、松下幸之助も同じようなことを言っています。

石の上にも三年という。しかし、三年を一年で習得する努力を怠ってはならない。

事を為す人は、精力的に活動してきたのです。松下幸之助にはもっと激しい言葉があります。

ぼくが奉公している時分に一人前になるためには、「小便が赤くなるくらいにならないとあかんのや。

そういうことを二、三べん経てこないことには、一人前の商売人になれんぞ」ということを、親方から聞いた。

どういうことかというと、商売で、心配で心配でたまらん、もう明日にでも自殺しようかというところまで追い込まれたら、小便が赤くなるという。

そういうようなことをしてきて初めて一人前の商売人になる。

だから尋ねるんやが、あなた、儲からん儲からん言うけど、小便赤くなったことあるか?

この言葉は今の時代に通用しない、と思う人は、やがて商売も傾けさせるのかもしれません。

働き方改革と生産性

働き方改革が叫ばれ、さまざまな部分でこれまでの仕事のやり方の見直しが進んでいます。

誤解を恐れずに言えば、その中で疑問に思うことの一つが、残業時間を含めて労働時間の短縮です。

もちろん、心身をむしばむような長時間労働やサービス残業はもってのほかです。

しかし、その仕事が自分の夢や理想を追い求めて自発的に寸暇を惜しんで行うものなら、一概に否定はできないのではないでしょうか。

働き方改革の背景にあるのが、生産性の向上です。労働時間を短縮することで生産性が上がるなら、それに越したことはありませんが、それほど単純なものではないでしょう。

ましてや、人件費抑制のみを図って労働時間を短縮するだけなら、会社の成果につながるはずがありません。

経営学者で「マネジメントの父」と呼ばれたピーター・ドラッカーは、こう言っています。

手っ取り早く、効果的に生産性を向上させる方法は、何を行うべきかを明らかにすることである。

そして、行う必要のない仕事をやめることである。

ドラッカーはまた、生産性を高めるには量から質に評価の視点を変えることだと言っています。

これらの言葉が意味するのは、仕事の中身と意義が重要であるということであって、決して、労働時間の問題とはとらえていません。

ですから、精力的に活動するのも、自分のマインドをかきたて、その働き方の先に自分とお客様の明るい未来、そして会社の成長が見えているなら、どんどんやっていったらいいでしょう。

現在の企業活動はスピードが求められますから、場合によっては朝から晩まで働くことも必要だということです。

ただし、家族をはじめ、仕事とは離れたところで自分にかかわる人たちがいるということは忘れてはいけません。

今の仕事のやり方で将来後悔することはないかということは意識しておく必要があります。

そうでなければ、往時の企業戦士が自らの体をもって発した教訓を生かせないということになってしまうでしょう。

柔軟でクリエイティブ思考が求められる時代

生産性に関してさらにいえば、どんな犠牲を払いどんなにコストをかけてでも、より高い仕事を目指せばいいというような考え方を捨てることです。

Facebookを立ち上げたマーク・ザッカーバーグはこう言っています。

完璧を目指すよりまず終わらせろ。

完璧主義は当然、時間がかかってしまいますし、やるべきことの先送りにつながります。

でき上がったものに満足できなければ、あとで修正すればいいだけです。

そのようにして、フットワークを軽くしておくのです。

フットワークを軽くするということは、思考を柔軟にし、さまざまなアイデアが湧いてくる余地を生みます。

現在のIT市場をみると、モバイルデバイスの開発からソフトウエア市場に軸足を移しています。

関連アプリやサービスに比重が移ってきたのです。

そこでは、ハードウエア以上に独創性が求められます。

クリエイティブな思考こそが新しい商売の糧になっているのです。

そしてそれは、ハードを生み出す以上の利益をもたらしています。

この傾向は今後、IT分野以外にも広がっていくでしょう。

単にモノやサービスを売るだけでなく、その前後、すなわちメンテナンスやパートナーシップを結んでいる別会社を取り込むなどやれることはいろいろあるでしょう。

こうした活動を阻害する大きな要因が大企業病といわれています。

つまり、決定が遅く、社内にばかり目が向いて顧客から目が離れているようでは、柔軟でクリエイティブな発想は生まれないというわけです。

であるならば、中小企業にも大きなチャンスがあることになります。

仕事ができる人というのは、少ないインプットで高い成果の出せる生産性の高い仕事のやり方を考案し、それを他の人にも分かるように説明でき、周りを動かせる人ではないでしょうか。

                                

精力的に動きたいなら、精力を体を動かすことだけに費やせず、クリエイティブな思考を働かせることに活用して、より大きな成果を得たいと思いませんか?